親の死をきっかけに実家が空き家となり、固定資産税や管理費に悩む人は少なくありません。空き家の半数以上は相続によって発生し、遠方で管理できない、兄弟姉妹で意見が分かれるといった問題も多く見られます。
放置すれば固定資産税が最大6倍に跳ね上がることもあり、近隣トラブルの火種にもなります。だからこそ、早めの対応が欠かせません。
本記事では、空き家の活用法、売却時の3,000万円控除、義務化された相続登記について解説します。
空き家とは?
「空家等対策特別措置法」では、居住や利用がなく放置された建物や敷地を空き家と定義しています(国や自治体所有は除く)。
総務省の調査によると、全国の空き家は約900万戸に達し、その半数以上が相続によって発生しています。親の死後に実家が空き家となるケースは珍しくありません。
空き家は防災・衛生・景観の面で問題を引き起こし、管理が不十分だと「特定空家等」に指定されることもあります。指定されれば固定資産税が跳ね上がるため、日頃の管理が重要です。
出典:e-GOV法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計(速報集計)結果」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/g_kekka.pdf
相続とは?
相続とは、人が亡くなったときにその財産を相続人が引き継ぐことです。現金や不動産などのプラス資産だけでなく、借金といったマイナス資産も含まれます。遺言書があればその内容に従い、なければ法律で定められた相続人が承継します。
株式会社NEXERとINTERIQの調査によると、将来的に実家を相続する可能性がある方の半数以上が「相続に不安がある」と回答しています。不安の内容としては「維持費や税金の負担」「手続きの複雑さ」「住むか売却するかの判断が難しい」といった声が目立ちました。
こうした現実を踏まえ、空き家をどう扱うかを早めに考える必要があります。
調査データ引用元:記事公開後、該当URLをご記載ください。
相続人の順番
相続の際、誰が相続人になるかは民法で決まっています。
| 順位 | 相続人 | 補足事項 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子ども(孫は代襲相続) | 子が亡くなっている場合は孫が相続する |
| 第2順位 | 父母(祖父母) | 第1順位がいない場合のみ相続権がある |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(甥・姪は代襲相続、一代限り) | 第1・第2順位がいない場合のみ相続権がある |
| 常に相続人 | 配偶者 | すべての順位と同時に相続する |
空き家の相続では複数人が関わるケースが多く、全員で遺産分割協議をして引き継ぐ人を決めなければなりません。意見が割れると協議が長引き、その間も固定資産税や維持費はかかり続けます。
相続する場合の手続きと必要書類
不動産を相続するときは、名義を変更する「相続登記」が必要です。手続きは不動産所在地を管轄する法務局で行います。
大まかな流れは次のとおりです。
1.相続人の確定
戸籍謄本などを集めて相続人を特定します。
2.遺産分割協議
相続人全員で集まり、誰が不動産を引き継ぐかを話し合います。
3.遺産分割協議書の作成
話し合いの結果を文書にまとめ、相続人全員が署名・押印します。
4.登記申請
協議書や必要書類を揃えて、法務局に登記を申請します。
相続登記は自分で行うことも可能ですが、書類収集や申請書作成は複雑です。多くの場合、司法書士に依頼するのが一般的で、費用は数万円から十数万円ほどかかります。
さらに2024年4月からは相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。放置せず、早めの対応が大切です。
相続登記に必要な書類
遺産分割協議によって相続登記を行う場合、主に次の書類が必要です。
| 区分 | 必要書類 | 用途・注意点 |
|---|---|---|
| 共通 | 登記申請書 | 法務局の公式サイトから書式を入手可能。内容が複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的。 |
| 被相続人に関する書類 | ・出生から死亡までの戸籍謄本一式(除籍謄本・改製原戸籍含む)・住民票の除票または戸籍の附票 | 被相続人の死亡と、相続人の確定を証明する。 |
| 相続人全員に関する書類 | ・現在の戸籍謄本・印鑑証明書(遺産分割協議書に押印した実印の証明) | 相続人の資格や協議内容の有効性を証明する。 |
| 不動産取得者に関する書類 | 住民票 | 新しい所有者の住所を登記するために必要。 |
| 不動産に関する書類 | ・固定資産税納税通知書・固定資産評価証明書 | 登録免許税の計算に使用(税率は固定資産税評価額の0.4%)。 |
| 補助書類 | 相続関係説明図 | 提出すれば戸籍謄本等の原本を還付してもらえる。 |
なお、遺言書がある場合は、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書は不要です。代わりに遺言書と検認済証明書(公正証書遺言を除く)を提出します。
法定相続分で登記する場合など、状況によって必要書類は一部変わります。
空き家を相続する場合の注意点
相続した空き家を放置すると、さまざまなデメリットやリスクが発生します。ここからは、空き家を相続したときに知っておくべき主な注意点を具体的に確認していきます。
管理費・維持費がかかる
空き家は使っていなくても、所有している限り維持管理費用がかかります。代表的なものは次のとおりです。
●ライフラインの基本料金
水道・電気・ガスは使用していなくても毎月請求されます。完全に解約すると掃除や点検ができなくなるため、多くの人が契約を残しています。
●建物のメンテナンス
屋根や外壁の補修、雨樋の清掃、給排水設備の点検を怠ると劣化が進みます。とくに雨漏りを放置すると、構造部分まで傷んで修繕費が高額になります。
●庭の手入れ
雑草や庭木を放置すると害虫が発生し、近隣に迷惑をかけることがあります。
●火災保険料
空き家は通常の住宅より火災リスクが高いため、保険料が割高になる場合があります。
●空き家管理サービスの利用
遠方に住んでいる場合は、自分で管理するのが難しくなります。月額1万円前後で巡回や簡易清掃を行うサービスがありますが、これも継続的な費用になります。
このように、空き家を持ち続けるだけで年間に数十万円かかることもあります。
固定資産税があがる
空き家を所有している限り、毎年1月1日時点の所有者に対して固定資産税と都市計画税が課されます。
●税率の基本
固定資産税は評価額の1.4%、都市計画税は市街化区域内で0.3%程度が標準です。
●住宅用地の特例
住宅が建っている土地は軽減措置を受けられます。
200㎡以下の小規模住宅用地の場合、固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1に減額されます。
例を数値で見ると次のようになります。
| 項目 | 通常の場合 | 特例適用後 |
|---|---|---|
| 土地評価額 | 1,200万円 | 同左 |
| 固定資産税 | 約16万8,000円 | 約2万8,000円 |
●特例が外れる場合
「特定空家等」に指定されると特例が解除され、固定資産税が最大6倍に増えます。
建物を解体して更地にした場合も特例がなくなり、税負担が大幅に増加します。
このように、空き家を放置するか解体するかで、固定資産税の額は大きく変わります。
出典:総務省ホームページ「都市計画税」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_10.html
特定空き家に指定される場合がある
空き家を放置すると、自治体から「特定空家等」に指定される可能性があります。これは「空家等対策の推進に関する特別措置法」で定められた制度で、次のような状態が対象となります。
【指定される主な状態】
●倒壊の危険がある場合
●衛生上有害となるおそれがある場合
●管理不全で景観を著しく損なっている場合
●周辺の生活環境に悪影響を及ぼすと判断される場合
【具体例】
●建物が傾いている、屋根や外壁が崩れかけている
●ゴミの放置による悪臭の発生
●害虫や害獣の大量発生
●草木が伸び放題で近隣に迷惑をかけている
| 段階 | 行政の対応 | 所有者への影響 |
|---|---|---|
| 助言・指導 | 管理や改善を求められる | 自主的な修繕や清掃が必要になる |
| 勧告 | 住宅用地の特例が解除される | 固定資産税が最大6倍に増える |
| 命令 | 従わない場合に命令が出される | 命令違反で50万円以下の過料が科される |
| 行政代執行 | 強制的に解体される | 解体費用(木造住宅でも100万円以上)が請求される |
このような事態を避けるためには、定期的に点検し、適切なメンテナンスを継続することが欠かせません。
近隣トラブルのおそれがある
空き家を放置すると、近隣にさまざまな迷惑や被害を及ぼす可能性があります。
【主なトラブルの例】
●害虫・害獣の発生
●雑草や庭木の放置
●不法侵入・不法投棄
●倒壊や火災の危険
これらの問題で近隣に損害を与えた場合、民法第717条にもとづき所有者が賠償責任を負うことがあります。実際に空き家管理の不備で損害賠償を請求された事例も存在します。
近隣との良好な関係を守るためにも、空き家を適切に管理することは所有者の重要な責任です。
出典:e-GOV法令検索「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_5-At_717
家の資産価値が下がる
人が住まない空き家は、急速に劣化して資産価値が下がります。とくに木造住宅は築年数に応じて大きく価値を失い、築10年で新築時の約半分、築20年ではほぼゼロになるといわれています。
空き家の場合、このスピードはさらに速まります。換気不足によって湿気がこもり、カビや結露が発生しやすくなります。木材は腐食し、シロアリ被害も起こりやすくなります。
また、水道を使わないことで配管のパッキンが劣化し、水漏れが起こることもあります。雨漏りや外壁のひび割れを放置すると構造部分にまでダメージが及び、修繕費が高額になります。
こうした劣化が進むと、売却しても買い手がつきにくく、賃貸として貸し出すことも難しくなります。将来的に活用や売却を考えるのであれば、空き家になった時点から適切に管理し、資産価値の下落を防ぐ努力を続ける必要があります。
【資産価値がある】空き家の活用法
相続した空き家に資産価値がある場合は、放置せずに有効に使うことで負担ではなく資産として活かせます。資産価値は立地や築年数、建物の状態、周辺の不動産相場などで判断されます。
売却をする
空き家を売却すれば現金化でき、固定資産税や維持費の負担から解放されます。
相続人が複数いる場合も代金を分けやすく、遺産分割を進めやすいのが特徴です。とくに人口減少で不動産価格が下がる傾向にある今、資産価値があるうちに売却しておくことは有効な選択肢といえます。
【メリット】
●固定資産税や維持費の負担をなくせる
●売却代金を相続人で分けやすい
●将来的な不動産価格の下落を回避できる
【注意点】
●相続登記を完了しないと売却できない
●売却益には所得税・住民税が課税される
●「空き家の3,000万円特別控除」を使えば節税できる
仲介には手数料や測量費用がかかりますが、売却代金から支払うことが可能です。また、雨漏りや傾きのある家でも、専門の買取業者なら買い取ってくれる場合があります。通常の仲介で売却が難しいときは、買取を検討するとよいでしょう。
賃貸として貸し出す
空き家を賃貸にすれば、家賃収入を得ながら固定資産税や維持費をまかなえます。人が住むことで建物の劣化を防げる点も魅力です。さらに所有権を手放さないため、将来は自分や子どもが住む選択肢を残せます。
【メリット】
●家賃収入で維持費や税金を補える
●建物の劣化を防ぎやすい
●将来の自己使用に備えられる
【注意点】
●リフォームや清掃などの初期費用がかかる
●修繕義務や入居者対応の負担がある
●管理会社に委託すると手数料が発生する
●年間20万円以上の所得があれば確定申告が必要
●賃貸にすると「空き家の3,000万円特別控除」が使えなくなる
安定収入が得られる一方で、費用や責任を伴うのが賃貸活用の特徴です。将来の売却を視野に入れる場合は、税制の不利益も含めて慎重に検討する必要があります。
出典:国税庁ホームページ「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
住居にする
相続した空き家を自宅やセカンドハウスとして利用すれば、家賃負担をなくし、実家を残せる安心感も得られます。
相続税がかかる場合、賃貸住宅に住んでいる相続人が移り住めば「小規模宅地等の特例(家なき子特例)」が適用され、相続税評価額を最大80%減らせる可能性があります。
【メリット】
●家賃負担を減らせる
●実家を残せる精神的な安心がある
●相続税を大幅に軽減できる場合がある
【注意点】
●リフォーム費用がかさむ可能性がある
●通勤や子どもの転校など生活環境が変わることがある
●自己居住した場合は「空き家の3,000万円特別控除」が使えない
実際に住むことで得られるメリットは大きいものの、費用や生活への影響を含めて慎重に判断する必要があります。
出典:国税庁ホームページ「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
維持管理する
すぐに売却や活用を決められない場合は、維持管理を続けるという方法もあります。実家への思い入れや、将来子どもに相続させたいという理由から所有を続ける人も少なくありません。
【メリット】
●思い出のある実家を手放さずに済む
●将来の活用や相続に備えられる
【注意点】
●固定資産税や火災保険料、修繕費、管理サービス費用がかかる
●年間維持費を長期的に負担できるか試算する必要がある
●相続登記が義務化されており、放置すれば過料を科される可能性がある
将来売却や賃貸に切り替えるときのためにも、定期的な点検やメンテナンスを行い、建物の状態を良好に保つことが重要です。
【資産価値がない】空き家の活用法
老朽化が激しい、立地が悪い、再建築不可などの理由で売却が難しい空き家は、資産価値がほとんどありません。放置すれば固定資産税や維持費の負担が続き、特定空家等に指定されるおそれもあります。
このような場合は、相続放棄や解体、無償譲渡などの方法を検討する必要があります。
相続を放棄する
相続放棄とは、被相続人の財産を一切承継しない手続きです。放棄をすると最初から相続人でなかったとみなされ、空き家や借金などを引き継ぐ義務もなくなります。
【メリット】
●空き家を相続しなくて済む
●借金などのマイナス財産を引き継がずに済む
【注意点】
●空き家だけを放棄することはできず、預貯金などプラスの財産も相続できなくなる
●相続放棄をしても、次の相続人に引き継ぐまでの間は管理義務が残る
●手続きは相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述書を提出する必要がある
●一部の相続人だけが放棄すると、残りの相続人に負担が集中する
相続放棄は便利な手段に見えても制約が多いため、財産の全体像を確認したうえで家族とよく話し合って判断することが大切です。
解体してほかの活用方法をする
空き家を解体して更地にすれば、売却しやすくなるほか、駐車場や資材置き場として活用する道も開かれます。建物に関する管理責任や倒壊リスクから解放される点も大きなメリットです。
【メリット】
●更地の方が売却しやすい場合がある
●建物の管理責任や倒壊リスクから解放される
●建物部分の固定資産税を払う必要がなくなる
【注意点】
●木造でも100万円以上、構造や立地条件によってはさらに高額な解体費用がかかる
●建物を解体すると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が最大6倍に増える
●再建築不可物件では解体後に新たな建物を建てられず、土地の価値が下がる
●解体後は1か月以内に「建物滅失登記」を行わないと過料の対象になる
なお、物件の状態によっては解体せずに買い取ってもらえる場合もあります。訳あり物件に強い買取業者へ相談してみるとよいでしょう。
無償で譲渡する
売却が難しい空き家を、無償で譲渡して手放す方法もあります。譲渡先としては、隣地の所有者、親戚や知人、活用したい団体や個人などが考えられます。とくに隣地の所有者は土地を広げられるため、引き取ってもらえる可能性が高いといえます。
【メリット】
●固定資産税や維持費の負担から解放される
●解体費用をかけずに手放せる
【注意点】
●個人間では受け取った側に贈与税がかかる場合がある
●個人から法人に譲渡すると、譲渡側にみなし譲渡所得税、法人側に法人税が課税されることがある
●相続登記や所有権移転登記、贈与契約書の作成が必要で、登録免許税や司法書士報酬といった費用が発生する
●無償でも引き取り手が見つからない場合がある
無償譲渡は確実な方法ではないため、事前に十分な調査と相談を行い、引き取り先を慎重に探すことが重要です。
寄付する
空き家を自治体や公益法人に寄付する方法もあります。
自治体の場合は窓口に相談が必要ですが、公共事業などで明確な活用目的がなければ断られるケースが多いのが実情です。一部自治体では条件付きで寄付を受け付けている制度もあるため、事前に確認しておくと安心です。
【メリット】
●公益法人等に寄付すれば、相続税の非課税特例が適用される場合がある
【注意点】
●自治体は使い道がなければ寄付を受け付けないことが多い
●個人や一般法人に寄付すると、受け取った側に贈与税や法人税がかかる可能性がある
●自治体や国以外に寄付する場合、寄付した側にみなし譲渡所得税が課税されることがある
●相続登記や所有権移転登記が必要で、登録免許税や司法書士報酬などの費用が発生する
寄付は社会的に意義のある方法ですが、必ずしも受け入れてもらえるとは限りません。事前に条件を調べ、コスト面も踏まえて判断することが重要です。
相続土地国庫帰属制度を利用する
2023年4月から始まった「相続土地国庫帰属制度」は、相続や遺贈で取得した土地を国に引き取ってもらえる仕組みです。売却も寄付も難しい土地を最終的に処分できる手段として注目されています。
【メリット】
●売却や寄付ができない土地を国に引き取ってもらえる
●所有者としての管理責任から解放される
【注意点】
●相続や遺贈で取得した土地のみ対象で、生前贈与や売買は対象外
●建物がある土地は対象外で、空き家は解体して更地にする必要がある
●担保権や使用権がある土地、土壌汚染や境界不明、崖地などは申請不可
●申請には審査手数料14,000円(土地1筆ごと)が必要
●承認されると10年分の管理費に相当する負担金を納める必要がある(宅地は一律20万円)
●相続登記が済んでいないと申請できない
手続きは法務局で行いますが要件が複雑なため、司法書士など専門家への相談が推奨されます。
出典:法務省ホームページ「相続土地国庫帰属制度の概要」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
空き家を売却する際の3,000万円控除の特例
相続した空き家を売却する場合、一定の条件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」を利用できます。
この制度では譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができ、税負担を大幅に軽減できます。譲渡所得税の税率は所有期間によって15%または30%(別途住民税と復興特別所得税が加算)となるため、最大で600万円ほどの節税効果が見込めます。
この特例は令和9年12月31日までの売却が対象です。期間限定の制度のため、売却を検討している場合は早めに準備を進めることが大切です。
対象になる建物と土地
控除の対象となるのは、以下の条件を満たす建物とその敷地です。
●昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物であること
●区分所有建物(マンション等)でないこと
●相続開始の直前、被相続人以外に居住者がいなかったこと
●敷地は被相続人の居住用家屋の土地であること
被相続人が老人ホーム等に入所していた場合でも、要介護認定を受けていることや、入所後に貸付や事業用に使われていないことなどの要件を満たせば対象になります。
適用条件
建物・土地の要件に加えて、次の条件を満たす必要があります。
●売却時期:相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年12月31日までに売却すること
●建物の状態:耐震基準を満たした状態で売却するか、解体して更地にすること。令和6年以降は、買主が耐震リフォームや除却を行えば適用可能
●使用状況:相続後に事業用・賃貸用・居住用として利用していないこと
●売却代金:1億円以下であること(複数人で売却する場合は合計額で判定)
●売却相手:親子や夫婦など特別の関係者でないこと
●他の特例との関係:「相続税の取得費加算の特例」とは併用できない
なお、令和6年以降の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり2,000万円までに制限されます。
出典:国税庁ホームページ「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
空き家の相続登記の義務化
2024年4月1日から、不動産の相続登記が法律で義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を済ませる必要があり、怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、この制度は新しい相続だけでなく、過去に発生した相続にも適用され、登記をしていない不動産は2027年3月31日までに手続きを完了しなければなりません。
出典:法務省ホームページ「相続登記の申請義務化について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
義務化の背景
背景には「所有者不明土地問題」の深刻化があります。相続登記をせずに放置すると、相続が繰り返されるたびに所有者が細分化し、誰が権利を持つのか分からなくなってしまいます。
その結果、売却や担保設定ができない、公共事業や再開発が進まないといった社会的な弊害が全国で発生しています。実際に所有者不明土地は九州本島の面積に匹敵する規模に膨れあがり、大きな問題となっています。
なぜ相続登記をするべき?
相続登記を怠れば、売却や活用はもちろん、将来の相続手続きも一層複雑になります。
相続した空き家をどのように活用するにしても、まずは登記を済ませることが出発点です。社会的な背景と法的な義務を理解したうえで、早めに行動を起こすことが求められています。
まとめ
相続した空き家を放置すると、固定資産税の増加や近隣トラブル、資産価値の低下など、さまざまなリスクが生じます。特定空家に指定されれば税負担が最大6倍になる可能性もあり、経済的な負担は年々重くなります。
老朽化が進んだ物件や立地条件の悪い空き家は、通常の不動産仲介では買い手が見つかりにくく、売却が難航するケースも少なくありません。そのような場合でも、訳あり物件を専門に扱う買取業者に相談すれば、スムーズに売却できる可能性があります。
INTERIQでは、老朽化や傾き、雨漏りのある物件など、訳あり物件の買取を積極的に行っています。物件買取の知識をもつ専門スタッフがお客さまに親身に寄り添って対応いたしますので、相続空き家の処分でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


