土地と建物の名義が異なる不動産では、トラブルや手続きが複雑になったりといった問題があります。
本記事では土地と建物の名義が違う理由、売却の際に注意すべきポイントまでお伝えします。
土地と建物の名義が違う理由
土地と建物の名義が違う不動産があることは、それほど珍しいことではありません。
ここでは主な理由を紹介します。
親が所有する土地に子どもが建物を建てた
親が所有する土地に子どもが建物を建てる場合です。
法的に土地は親の所有物、建物は子どもの所有物となります。
相続後に名義変更をせず建物を建てた
土地を相続したにもかかわらず、相続登記をしないまま建物を新築した場合です。
このとき、土地の名義は被相続人(亡くなった人)のまま、建物は相続人の名義になります。
売却時や抵当権設定時に、法務局で登記が通らないといった問題があるため、2024年4月より相続登記が義務化されました。
借りている土地に建物を建てた
いわゆる借地権付き建物のパターンです。
土地の所有権は地主にあり、建物は借地人(借主)の名義になります。
この場合、建物の所有者は借地権という形で土地を使用する権利を持ちます。
法的に所有関係が明らかにされているので違法ではありませんが、建物の売却時にはいろいろと制約があります。
親子・夫婦・兄弟など複数名義人による分割所有
親子や夫婦、兄弟などで不動産を共有している場合も、土地と建物の名義が一致しないことがあります。
例えば、土地は親子で共有していても、建物は親だけの単独名義というケースです。
また、住宅ローンの契約上、夫婦で持分を分けて登記することもあり、この場合も厳密には名義が一致していません。
土地と建物で名義が違うと売却時に不利?
土地と建物の名義が違うことで売却時に問題になることも多々あります。
住宅ローンの審査に通りにくい
まず、買主が住宅ローンを利用する際に、金融機関から融資を断られる可能性が高くなります。
これは、土地と建物の所有者が違うと担保設定が複雑になり、金融機関がリスクを嫌うためです。
実際に、多くの金融機関では土地と建物の名義が統一されていることを融資の条件としています。
契約手続きが複雑になる
また、売却契約の締結においても複雑な手続きが必要となります。
土地の所有者と建物の所有者がそれぞれ売買契約書に署名する必要があり、一方の所有者が売却に同意しない場合は売却自体が不可能になります。
さらに、所有権移転登記の際にも、土地と建物を別々に手続きする必要があり、登記費用が割高になる傾向があります。
税務申告が複雑になる
売却益が発生した場合、土地の所有者と建物の所有者それぞれに課税されるため、税務申告も複雑になります。
特に、居住用財産の3,000万円特別控除などの特例を適用する際には、要件を満たしているか慎重に確認する必要があります。
名義が違う不動産の売却方法
名義が異なる不動産を売却したいときには、どうすればよいでしょうか。
主に二つのアプローチがあります。
名義を統一してから売却する
一つは単純に、売却前に土地と建物の名義を統一することです。
名義統一の方法として、贈与による方法があります。
例えば、土地が夫名義で建物が妻名義の場合、建物の名義を夫に贈与することで統一できます。
ただし、贈与税が発生する可能性があるため、不動産の評価額を事前に確認し、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を超える場合は税務面での検討が必要です。
建物の評価額が比較的低い場合は、この方法が効果的です。
適正な価格で売買契約を締結し、名義を移転する方法も有効です。贈与税は発生しませんが、不動産取得税や登録免許税などの費用がかかります。
売却により利益が出た場合は、譲渡所得税の対象となる点には注意が必要です。
相続が関わる場合は、相続登記により名義を整理することができます。
相続人全員の合意のもと、遺産分割協議書を作成し、一人の名義に統一してから売却を進めます。
この場合、相続税の申告期限との兼ね合いも考慮する必要があります。
共有持分として売却する
名義統一が困難な場合や、統一にかかる費用が高額になる場合は、土地と建物をそれぞれの持分として売却する方法もあります。
土地の所有者と建物の所有者が共同で売主となり、買主に対してそれぞれの持分を売却します。
共有持分として売却する方法のメリットは、名義統一にかかる時間と費用を省けることです。
また、贈与税や不動産取得税などの税負担を回避できます。
売却代金についても、土地と建物の評価額に応じて按分することで、公平な分配が可能になります。
ただし、買主にとっては複雑な取引となるため、売却価格が相場より低くなる可能性があります。
また、買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関の審査が厳しくなる傾向があります。
そのため、現金で購入できる買主を見つけるか、投資用物件として売却することを検討する必要があります。
売却手続きの流れ
名義が違う不動産の売却では、通常の売却よりも手続きが煩雑になります。
準備を怠ると売却時期が大幅に遅れる可能性があるため、計画的に進めましょう。
名義統一時
名義統一を選択する場合、まず現在の登記内容を正確に把握することから始めます。
法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、土地と建物それぞれの所有者、持分、担保の設定状況などを確認します。
古い物件の場合、登記内容と実際の状況が異なることがあるため、必要に応じて測量や境界確定も行います。
贈与による名義統一の場合、贈与契約書の作成が必要です。
契約書には贈与する不動産の詳細、贈与の理由、贈与者と受贈者の署名押印が必要で、印鑑証明書も添付します。
その後、法務局で所有権移転登記を申請します。
必要書類には、登記申請書、贈与契約書、印鑑証明書(発行から3か月以内)、住民票、固定資産評価証明書などがあります。
売買による名義統一の場合は、適正価格を設定するために不動産鑑定士による鑑定評価書を取得することを推奨します。
売買契約書を作成し、売買代金の授受を行った後、所有権移転登記を申請します。
この際、不動産取得税の軽減措置が適用できるかも確認しておきましょう。
売却契約時
名義統一後または共有持分での売却契約では、売主全員が契約に参加する必要があります。
売買契約書には、土地と建物の詳細な情報、売買代金とその配分方法、引渡し時期、契約不適合責任などを明記します。
売主側で準備する主な書類には、登記事項証明書、固定資産評価証明書、住民票、印鑑証明書、本人確認書類があります。
建物については、建築確認済証や検査済証、設計図書などの建築関係書類も必要です。
マンションの場合は管理規約や長期修繕計画書、一戸建ての場合は境界確認書や測量図も準備します。
契約締結時の注意点として、手付金の受領について取り決めを明確にする必要があります。
共有持分で売却する場合、手付金をどのような比率で分配するか決めておきましょう。
契約不適合責任についても、土地の瑕疵と建物の瑕疵をそれぞれ誰が負担するかを明確にしておかないと、後日トラブルの原因となります。
決済時には、売買代金の受領と同時に所有権移転登記を行います。
司法書士が立ち会うのが一般的で、登記に必要な書類の最終確認と本人確認を行います。
専門家に相談すべきケース
名義が違う不動産の売却は複雑な手続きを伴うため、専門家に相談すべきケースもあります。
適切なタイミングで専門家に相談することで、トラブルを回避し効率的に売却を進めることができます。
法律関係で複雑な問題がある場合は、司法書士への相談が不可欠です。
例えば、相続登記が長期間放置されている場合、相続人が多数に及んでいる場合、登記内容に誤りがある場合などです。
司法書士への報酬は、名義統一の登記で5万円から10万円程度、売買による所有権移転登記で3万円から8万円程度が相場ですが、複雑なケースでは追加費用が発生することもあります。
税務面での判断が難しい場合は、税理士への相談を推奨します。
特に、贈与税や譲渡所得税の計算が複雑になる場合、特例の適用要件を満たしているかの判断、売却タイミングの税務的な検討をするときなどです。
税理士への相談料は1時間あたり1万円から2万円程度で、申告書の作成を依頼する場合は売却価格に応じて10万円から30万円程度の費用がかかります。
不動産の価値評価や売却戦略については、不動産鑑定士や不動産会社への相談が有効です。
特に、共有持分での売却を検討する場合や、買主が限定される可能性がある場合は、市場価格の適正な評価と売却戦略の立案が重要になります。
不動産鑑定士による鑑定評価は20万円から50万円程度、不動産会社による簡易評価は無料から数万円程度です。
専門家への依頼費用は決して安くありませんが、自己判断による失敗や手続きの遅延を考慮すると、結果的に費用対効果が高い投資となることが多いでしょう。
まとめ
土地と建物の名義が違う不動産の売却は、通常の売却と比べて複雑な手続きが必要ですが、適切な方法を選択することでスムーズに進めることができます。
最も重要なことは現状を正確に把握し、名義統一か共有持分売却かを適切に判断することです。
名義統一は手続きに時間と費用がかかりますが、売却時の選択肢が広がり、適正価格での売却が期待できます。
一方、共有持分での売却は迅速に進められますが、買主が限定される可能性があります。
滞りなく売却させるためには、まず登記内容の確認から始め、必要に応じて司法書士、税理士、不動産の専門家への相談を検討してください。
特に相続が関わる場合や税務上の判断が必要な場合は、早期の相談が重要です。
適切にサポートしてもらうことで、名義が違う不動産でも安心して売却を進めることができるでしょう。
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