セットバック費用はいくらかかる?相場と負担を抑える方法

2025.10.12

セットバックにより建築可能な建物の規模が小さくなり、思い通りの建築計画ができないことがあります。

また、セットバックが必要な土地を購入して建物を建てる際には、工事費用が予想外の出費となることもあるでしょう。

本記事では、セットバック費用の内訳から負担者、実際の金額相場まで、土地購入前に知っておくべき情報を解説します。

セットバックとは

セットバックとは、建築基準法で定められた道路幅員を確保するために、敷地の一部を道路側へ後退させることです。

日本の建築基準法では、建築物を建てる敷地が幅4メートル以上の道路に、2メートル以上接していなければならないと定められています。

しかし、古くからある住宅地などでは、道路の幅が4メートル未満の場合もよく見られます。

このような場所では、将来的に道路を4メートル幅に拡張することを前提に、敷地の一部を道路として提供する形で建築することが求められています。

この敷地の後退を総称して「セットバック」といいます。

セットバックした部分は道路とみなされるため、建物や塀などの恒久的な構造物を設置できません。

また、後退部分は所有者の土地のままですが、実質的には道路用地として扱われます。

セットバックにかかる費用の内訳

セットバック費用の内訳はどうなっているでしょうか。

それぞれの費用項目について、詳しく見ていきましょう。

測量関連の費用

セットバック工事を行う前には、正確な測量が欠かせません。

費用は、隣地との境界線が確定しているかどうかによって変わります。

隣地との境界線が確定している場合は「現況測量」、確定していない場合は「確定測量」を行います。

現況測量とは

現況測量は、土地の現在の状態を把握するための測量です。

隣地所有者の立ち会いや同意は不要で、境界を法的に確定する目的ではありません。

建物の配置、敷地の形状、道路との位置関係を確認する際に行われ、設計や計画段階での参考資料として用いられます。

現況測量にかかる費用は、10~20万円程度が一般的な相場です。

確定測量とは

確定測量は、土地の境界を法的に確定するための測量です。

隣地所有者との立ち会い・同意が必要で、境界杭の設置や「境界確認書」「地積測量図」などの公的書類を作成します。

確定測量は、不動産取引や建築確認申請、登記などで必須とされる正式な手続きです。

作業工程が多く、協議も伴うため費用は高めで、35~70万円程度が一般的です。

工事関連の費用

セットバック部分の工事費用です。

既存の塀や門扉などがあれば、撤去工事が必要となります。

コンクリートブロック塀の撤去では、1メートルあたり約1万円から2万円、基礎部分の撤去も含めるとより費用がかさみます。

セットバック部分の整地工事は、道路として使用できるように地面を平らにし、適切な勾配をつける作業です。

土の掘削や運搬、残土処分なども含まれ、1平方メートルあたり約5,000円から10,000円の費用がかかります。

アスファルト舗装を行う場合は、1平方メートルあたり約5,000円から8,000円の費用が必要です。

手続き関連の費用

セットバックに伴う各種手続きにも費用が発生します。

まず、道路位置指定申請や建築基準法上の手続きに関する費用として、申請書類の作成や提出にかかる手数料があります。

これらは市区町村によって異なりますが、一般的には数万円程度の費用となります。

また、これらの手続きを建築士や行政書士に依頼する場合は、代行手数料として10万円から20万円程度の費用が別途必要となります。

登記関連の費用としてはセットバック部分を道路として分筆する場合、分筆登記が必要となり、土地家屋調査士への報酬として約10万円から20万円の費用がかかります。

セットバック部分を市区町村に寄付する場合、所有権移転登記も必要となり、司法書士への報酬として約5万円から10万円の追加費用が発生します。

事例から見るセットバック費用の相場

ここでは、よくある事例からセットバック費用の相場を見てみましょう。

標準的なケースの費用例

標準的な住宅地で、間口10メートル、セットバック幅1メートルの場合を例に考えてみましょう。

この場合、セットバック面積は10平方メートルとなります。

既存のブロック塀があり、これを撤去して新たにフェンスを設置する一般的なケースでは、総費用は約80万円程度となることが多いです。

内訳としては、測量費用が約40万円、ブロック塀の撤去と処分に約15万円、整地工事に約10万円、アスファルト舗装に約12万円、新設フェンスの設置に約15万円といった配分になります。

地域ごとの物価水準や業者によって変動しますが、首都圏よりも地方都市の方が若干低めになる傾向があります。

費用が高額になるケース

条件によってセットバック費用が高額になることもあります。

例えば、角地でL字型にセットバックが必要な場合、通常の倍以上の費用がかかることも珍しくありません。

間口10メートル、奥行き15メートルの角地で両方向に1メートルずつセットバックする場合、セットバック面積は約25平方メートルとなり、総費用は200万円を超えてしまいます。

既存の擁壁を取り壊して新たに構築する場合、1メートルあたり20万円から50万円もの費用がかかります。

その他、地中に埋設物がある場合も費用が増加する要因となります。

例えば、古い浄化槽や井戸、防空壕などが埋まっている場合、これらの撤去費用が別途必要となり、状況によっては100万円以上の追加費用が発生することがあります。

セットバック費用を抑える方法

多くの自治体では、セットバック費用の一部を補助する助成金制度を設けています。

工事費用の半額補助や、上限額を定めた一律支給など、内容は地域によってさまざまです。

工作物(門・塀など)の撤去に関する助成金については、現地確認しなければならないといった条件が設けられている場合もあります。

そのため、工事前には補助制度の要件を把握しておきましょう。

なお、土地の状況や購入者の希望によっては、セットバックを行わずに現状のまま販売するという選択肢もあります。

まとめ

セットバック費用は、測量費、工事費、手続き費用など多岐にわたり、標準的なケースでも80万円ほど、条件によっては100万円以上になることもあります。

セットバック費用を抑えるために、自治体の補助金制度を確認し、活用できるかを相談するとよいでしょう。

一方で、セットバックによって建築可能面積が狭くなる場合や、工事負担が大きい場合は、無理に工事せずに現状のまま売却する方法もあります。

再建築不可のままでも、買取専門業者に依頼すればスムーズに売却できます。

INTERIQでは、お客様の状況や物件の特性を把握し、最適なご提案をいたします。お見積もり・ご相談は無償で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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