相続で受け継いだ空き家をそのまま持ち続けていると、固定資産税や管理費などの負担が重く感じることがあります。できるだけ高く売りたいと思っても「売るときにどんな税金がかかるのか心配」という方も多いのではないでしょうか。
空き家を売却する際には「譲渡所得税」などいくつかの税金がかかりますが、条件を満たせば最大3,000万円の特別控除を受けられる場合があります。
本記事では、空き家を売るときに必要な税金の種類や計算方法、節税につながる特別控除の仕組み、確定申告の流れまでを、わかりやすく解説します。
空き家を売却する際にかかる税金
空き家を売却すると、いくつかの税金が発生します。代表的なものは「譲渡所得税(所得税・住民税)」「印紙税」「登録免許税」「固定資産税の精算」の4つです。
ここでは、それぞれの概要や計算の考え方、かかるタイミングを順に説明します。
譲渡所得税
譲渡所得税は、空き家を売却して利益が出た場合にかかる税金です。売却価格そのものに課税されるのではなく、売却によって得た利益である「譲渡所得」に対して課税されます。
譲渡所得の計算式は次のとおりです。
「譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除」
この式で求めた「譲渡所得」に、税率を掛けることで、実際に支払う税金の金額が決まります。
【売却価格(譲渡収入金額)】
空き家を売った金額のことです。
売買代金のほか、固定資産税や都市計画税の清算分も含まれます。
【取得費】
空き家を取得したときにかかった費用の合計です。
主な内訳は以下のとおりです。
●土地や建物の購入代金、建築費
●仲介手数料
●登録免許税・不動産取得税
●測量費などの関連費用
もし取得費がわからない場合は、売却価格の5%を取得費として計算できます。ただしその場合、譲渡所得が多く算出されるため税金が高くなる可能性があります。購入時の契約書や領収書などは、できるだけ保管しておきましょう。
【譲渡費用】
売却時に発生する費用のことです。
たとえば、以下のようなものが該当します。
●不動産会社への仲介手数料
●売買契約書の印紙代
●測量費
●建物を解体した場合の費用
【税率】
空き家をどのくらいの期間所有していたかによって変わります。復興特別所得税は、東日本大震災の復興を支えるためのもので、2013年1月1日から2037年12月31日まで適用されています。
| 区分 | 所有期間 | 税率(合計) | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 20.315% | 所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% | 所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63% |
相続した空き家の場合は、被相続人(親など)が取得した日から所有期間を数えます。そのため、親が長く持っていた家であれば、多くは長期譲渡所得として扱われます。
出典:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm)
出典:国税庁「取得費が分からないとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm)
出典:国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm)
印紙税
印紙税は、不動産の売買契約書を作成するときに支払う税金です。契約書に収入印紙を貼り、消印を押すことで納税手続きが完了します。
この税金の金額は、契約金額によって異なります。2027年3月31日までに作成される契約書については、軽減税率が適用されます。
たとえば、契約金額が500万円を超えて1,000万円以下の場合は5,000円、1,000万円を超えて5,000万円以下の場合は1万円、5,000万円を超えて1億円以下の場合は3万円となります。
売買契約書は一般的に、売主と買主がそれぞれ1通ずつ保管するため、双方が印紙税を負担することになります。
出典:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm)
出典:国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm)
登録免許税
登録免許税は、不動産の名義を変更する(所有権移転登記)、または、住宅ローンを完済した際に担保を外す(抵当権抹消登記)ときにかかる税金です。
税額は以下のとおりです。
●通常の税率:不動産の価額 × 2.0%
●軽減税率(2027年3月31日までに取得した建物):0.3%
一般的には、所有権移転登記にかかる登録免許税は買主が負担します。
一方で、売主が負担するケースもあります。たとえば、住宅ローンの残債がある場合は「抵当権抹消登記」が必要で、このときの税額は不動産1件につき1,000円です。
また、相続で取得した空き家を売却するときは、まず「相続登記」が必要です。相続登記の登録免許税は、不動産の価額の0.4%です。
2024年4月からは相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記を済ませないと、10万円以下の過料が課される可能性があります。
国税庁「登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
法務省「住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)」(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/info-net_00001.html)
法務省「相続登記の申請義務化について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html)
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課される市町村税です。税額は、固定資産税評価額に対して標準税率1.4%を乗じて計算します。
都市計画区域内にある不動産の場合、固定資産税に加えて都市計画税も課税されます。都市計画税の標準税率は0.3%です。
年の途中で空き家を売却する場合でも、1月1日時点の所有者である売主に1年分の固定資産税が課税されます。ただし、実務上は所有権移転日を基準に日割り計算し、買主に按分負担してもらうのが一般的です。
【軽減措置】
住宅用地には、固定資産税と都市計画税の軽減措置があります。小規模住宅用地については、固定資産税は評価額の6分の1、都市計画税は評価額の3分の1に軽減されます。
空き家を解体して更地にすると、この軽減措置が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍になります。売却が決まっていない段階で安易に解体すると、税負担が大幅に増えてしまうため、注意が必要です。
出典:総務省「固定資産税」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_15.html)
こちらの記事では、空き家の固定資産税について解説しています。
固定資産税が6倍なる時期や避ける方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
税制優遇が受けられる条件
空き家を売って譲渡所得が出た場合でも、条件を満たせば税金が軽くなる優遇措置を受けられます。
主なものは「親などから相続した空き家を売ったときの特例」「自分が住んでいたマイホームを売ったときの特例」「10年以上所有していた不動産を売ったときの特例」の3つです。
被相続人の空き家を売った場合の特例
相続や遺贈によって取得した空き家を売却する場合、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。 正式名称は「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
●控除額:原則3,000万円
※令和6年1月1日以降の売却で、相続人が3人以上いる場合は上限が2,000万円になります。
●対象期間:2016年4月1日〜2027年12月31日までに売却した空き家
この特例を受けるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
●被相続人が亡くなる直前まで1人で住んでいた家屋であること
●1981年5月31日以前に建築された家屋であること
●区分所有建物(マンションなど)でないこと
●相続後から売却までの間、事業・賃貸・居住のいずれにも使用していないこと
●相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
●売却代金が1億円以下であること
●売却時点で耐震基準に適合していること、または売却前に耐震改修工事を行うか家屋を取り壊して更地にしていること
この特例を利用するためには、市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受ける必要があります。
この制度を活用すれば、空き家を売却するときの税負担を大きく減らせます。ただし、細かい要件を満たしていない場合は適用されないため、事前に税理士や市区町村の窓口で確認しておくことが大切です。
出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
マイホームを売った場合の特例
自分が住んでいた家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。 正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。
この特例は、現在は住んでいないものの、以前に自分が住んでいた家(空き家になっている物件)にも適用できます。
主な適用要件は以下のとおりです。
●自分が住んでいた家屋を売却すること
●住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
●家を取り壊した場合は、取り壊した日から1年以内に敷地の売買契約を結び、かつ住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
●売却した年、その前年、または前々年にこの特例やほかの特例を利用していないこと
●親子や夫婦など、特別な関係がある相手に売却していないこと
相続した空き家の3,000万円特別控除と、このマイホームの3,000万円特別控除は控除額が同じでも別の制度です。それぞれ適用条件が異なるため、利用する際はどちらの特例に当てはまるかを確認することが大切です。
出典:国税庁「マイホームを売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)
10年以上所有した場合の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合は、長期譲渡所得の税率がさらに軽減される特例があります。 正式名称は「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」です。
この特例を適用すると、以下のように税率が軽減されます。
●課税長期譲渡所得のうち 6,000万円以下の部分
→ 所得税 10%、住民税 4%、復興特別所得税0.21%の合計 14.21%
●6,000万円を超える部分
→ 通常の長期譲渡所得の税率(20.315%)
主な適用要件は以下のとおりです。
●売却した年の1月1日時点で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていること
●自分が住んでいた家屋を売却すること
●住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
●売却した年の前年および前々年に、この特例を受けていないこと
●親子や夫婦など、特別な関係がある相手に売却していないこと
この特例は「マイホームを売った場合の3,000万円特別控除」と併用が可能です。両方の条件を満たすことで、さらに税負担を軽減できます。
出典:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)
出典:国税庁「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/fukko_tokubetsu/index.htm)
税金の控除を受ける際の注意点
税金の優遇を受けるためには、いくつか気をつけるべきポイントがあります。とくに、確定申告が必要になることや、特例を使うための条件を正しく確認することが大切です。
ここでは、それぞれのポイントについて詳しく説明します。
確定申告が必要
空き家の売却で特別控除を受けるには、必ず確定申告を行う必要があります。 たとえ譲渡所得が控除額の範囲内におさまり、実際に税金が発生しない場合でも、確定申告をしなければ特例は適用されません。
●申告期間:空き家を売却した翌年の2月16日から3月15日まで
●提出先:税務署へ確定申告書と必要書類を提出します。
確定申告を忘れると、本来受けられるはずの控除が適用されず、余分な税金を支払うことになります。さらに、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される場合もあります。
特例を適用する際は、確定申告書に関連書類を添付する必要があります。「被相続人の空き家の3,000万円特別控除」を利用する場合は、次の書類が必要です。
●譲渡所得の内訳書
●登記事項証明書
●被相続人居住用家屋等確認書
●売買契約書の写し
確定申告を正しく行うことで、特例を確実に適用でき、不要な税負担を避けられます。売却の翌年には、早めに準備を進めることが大切です。
出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
出典:国税庁「確定申告を忘れたとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm)
特例の要件を満たす必要がある
それぞれの特例には細かい適用条件があり、いずれかひとつでも満たしていない場合は特例を受けることができません。
とくに注意したいのが売却の期限です。
●相続した空き家の特例:相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
●マイホームの特例:住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却すること
これらの期限を過ぎると、特例は適用されません。
相続空き家の特例では、耐震基準を満たすことが要件となっています。売却前に耐震診断を受け、基準を満たしていない場合は耐震改修工事を行うか、建物を取り壊す必要があります。
特例の要件は複雑で、判断が難しいケースもあります。不動産会社や税理士などの専門家に相談し、適用可能性を事前に確認することをおすすめします。
確定申告のやり方
空き家を売って利益が出た場合や、税制上の特例を利用する場合には、確定申告を行う必要があります。ここでは、確定申告の基本的な流れを4つのステップでわかりやすく解説します。
必要な書類を揃える
確定申告を行う際には、さまざまな書類を準備する必要があります。 申告期間が近づいてから慌てないように、早めの準備を心がけましょう。
確定申告では、まず次の3つの書類を用意します。
●確定申告書B様式
●確定申告書第三表(分離課税用)
●譲渡所得の内訳書
これらの用紙は、最寄りの税務署で受け取るほか、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
売却した不動産に関する証明書類も必要です。
●登記事項証明書
●売買契約書の写し
●取得費や譲渡費用を証明する書類(例:購入時の売買契約書、仲介手数料の領収書、解体費用の領収書など)
特例を利用する場合は、上記に加えて追加の書類が求められます。
●被相続人の空き家の特例を適用する場合
→ 被相続人居住用家屋等確認書、耐震基準適合証明書 など
書類が不足していると特例が適用されない場合があります。必要な書類は状況によって異なるため、事前に税務署や税理士に確認しておくと安心です。
出典:国税庁「土地や建物などの譲渡所得について主な特例の適用を受ける場合の申告書添付書類チェックシート」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joto/annai/e1.pdf)
確定申告書を作成する
必要な書類を揃えたら、確定申告書の作成に進みます。手順に沿って進めるとスムーズに作成できます。
1.譲渡所得の内訳書を作成する
まず、譲渡所得の内訳書を作成します。
売却した不動産について、以下の項目を記入し、譲渡所得(利益)を計算します。
●不動産の所在地
●面積
●売却価格
●取得費(購入時の費用)
●譲渡費用(仲介手数料や解体費など)
2.確定申告書第三表を作成する
次に、譲渡所得の内訳書で算出した金額を確定申告書第三表に転記し、税額を計算します。
3.確定申告書B様式を作成する
最後に、第三表で計算した税額を確定申告書B様式へ転記します。これにより、全体の所得と税額が確定します。
4.国税庁のオンライン作成ツールを活用する
申告書の作成には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の利用がおすすめです。画面の案内に沿って金額を入力するだけで、自動的に計算され、正確な申告書を作成できます。
複雑な計算や書類作成に不安がある場合は、税務署の相談窓口や税理士に確認しながら進めると安心です。
出典:国税庁「令和6年分譲渡所得の申告のしかた」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/kisairei/joto/index.htm)
確定申告書を提出する
確定申告書と必要書類を揃えたら、税務署へ提出します。提出方法は次の3つがあります。
1.税務署の窓口に直接持参する
職員に確認してもらいながら提出できるため、初めての方にも安心です。
2.郵送で提出する
提出期限日までの消印があれば有効です。提出先の税務署を事前に確認しておきましょう。
3.e-Tax(電子申告)を利用する
インターネットを使って自宅から申告でき、24時間いつでも提出できます。窓口に行く必要がなく、待ち時間もありません。
確定申告書の提出期限は、売却した翌年の3月15日です。
期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性があります。
余裕をもって書類を準備し、早めに提出するようにしましょう。
出典:国税庁「申告書の提出方法」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/02/2_03.htm)
納税する
確定申告の結果、税金を納める必要がある場合は、納税手続きを行います。 納税の期限は、確定申告書の提出期限と同じく翌年の3月15日です。
納税にはいくつかの方法があります。自分に合った方法を選びましょう。
●金融機関や税務署の窓口で現金納付する
●預貯金口座から自動で引き落とし「振替納税」
●クレジットカードでの納付
●スマートフォン決済アプリによる納付
●コンビニでの納付
●e-Taxを利用した電子納税
出典:国税庁「納付の方法」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/02/2_04.htm)
空き家の売却方法
空き家を売る方法はいくつかあります。それぞれの方法に特徴やメリット、デメリットがあるため、自分の状況や目的に合った売却方法を選ぶことが大切です。
株式会社NEXERとINTERIQが実施した調査によると、実家を相続した場合、約3割(29.3%)が「売却する」と回答しています。また、56.8%が「相続に不安がある」と回答しており、主な不安要素として「維持費や税金の負担」「手続きの複雑さ」が挙げられています。
調査データ引用元:記事公開後、該当URLをご記載ください。
こちらの記事では、空き家の売却について解説しています。
具体的な方法や流れも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
そのまま売却する
空き家を解体やリフォームをせず、そのままの状態で売却する方法です。余分な費用をかけずに売れるため、多くの人が選ぶ一般的な売却方法です。
建物の状態がよい場合は「中古住宅」として売却できますが、老朽化が進んでいる場合や築年数が古い場合は「古家付き土地」として売り出すのが一般的です。
【メリット】
●解体費用やリフォーム費用がかからない
●売却準備に時間がかからず、すぐに販売活動を始められる
【デメリット・注意点】
●建物の状態が悪いと、買い手が見つかりにくくなる可能性がある
●売却後に建物の欠陥が見つかった場合、契約不適合責任を負うリスクがある
リフォームして売却する
空き家をリフォームしてから売却する方法です。
内装や設備を新しくすることで物件の印象がよくなり、買い手にとって魅力的な物件としてアピールできます。結果として、より高い価格で売却できる可能性があります。
【メリット】
●現状のまま売る場合よりも高値で売却できる可能性がある
●外観や内装の印象がよくなり、購入希望者の候補に選ばれやすくなる
【デメリット・注意点】
●リフォーム費用がかかる
●費用をかけても、売却価格に十分反映されない場合がある
●改修内容によっては、費用対効果が見合わないこともある
更地にして売却する
空き家を解体して更地にし、土地として売却する方法です。 建物が老朽化していて再利用が難しい場合に適した売却方法です。
【メリット】
●建物がないため、買い手が新築のイメージを描きやすくなる
●とくに立地がよい場合は、更地の方が早く売却できる可能性がある
【デメリット・注意点】
●解体費用がかかる
木造住宅の場合、一般的な目安は坪あたり3万〜5万円程度
●固定資産税が上がる
建物を解体すると「住宅用地の特例」が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍に増えることがある
マッチングサイトで売却する
インターネット上のマッチングサイトに空き家の情報を掲載し、買い手を探す方法です。 代表的な例として、自治体が運営する「空き家バンク」があります。
【メリット】
●一般の不動産会社では取り扱ってもらえないような物件でも掲載できる
●自治体のサイトを通じて、地域に住みたい人や移住希望者にアプローチできる
【デメリット・注意点】
●不動産会社のように積極的な営業活動が行われない
●買い手が見つかるまで時間がかかる可能性がある
個人で売買取引する
不動産会社を介さず、売主と買主が直接やり取りをして取引を行う方法です。
【メリット】
●仲介手数料がかからないため、その分だけ売却額の手取りが多くなる可能性がある
●交渉や契約条件を自分のペースで進められる
【デメリット・注意点】
●不動産の適正価格を判断しにくく、相場より安く売ってしまうリスクがある
●契約書の作成や重要事項の説明など、法律に基づく手続きを正しく行えない可能性がある
●トラブルが発生した場合に、仲介業者のサポートを受けられない
専門の買い取り業者に依頼する
不動産買取業者に直接買い取ってもらう方法です。仲介ではなく、業者自体が買主となるため、スムーズに取引を進められます。
この方法は、老朽化が進んだ空き家や事故物件など、一般の買主が見つかりにくい物件を所有している方にとくに向いています。
【メリット】
●仲介手数料が不要で、余分な費用を抑えられる
●条件がまとまれば、最短で数日〜数週間で売却が完了する
●現状のまま売却できるため、片付けや解体の手間がかからない
●遠方の空き家でも現地に行かずに引き渡せる
●雨漏り・傾き・設備故障などがある物件でも買い取り可能な場合がある
●事故物件のように一般の買主が敬遠する物件にも対応できる
●売却後に不具合が見つかっても、契約不適合責任を問われない
【デメリット・注意点】
●買取価格は市場価格より低くなる傾向があり、一般的に相場の7〜8割程度となる
(業者がリフォームや修繕を行い再販するため、その費用と利益分が差し引かれるため)
ただし、仲介手数料や片付け・解体費用がかからない分、最終的な手取り額が仲介売却と大きく変わらない場合もあります。
次のような状況にある方には、買取業者への売却がおすすめです。
●相続した空き家が遠方にあり、管理や片付けが難しい方
●荷物が多く、処分に時間や費用をかけたくない方
●事故物件などで一般の買主が見つかりにくい方
●雨漏りや傾きなど、修繕費が高額になる物件を所有している方
●できるだけ早く現金化したい方
空き家を売却する際にかかる費用
空き家を売却する際は、税金以外にもいくつかの費用が発生します。どのような費用が必要になるのかを把握し、あらかじめ資金計画を立てておくことが大切です。
仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼して売却する場合は、成約時に仲介手数料を支払います。仲介手数料の上限は法律で決められており、売却価格に応じて計算されます。
売却価格が400万円を超える場合は、
「売却価格 × 3% + 6万円(+消費税)」
が上限の目安です。
たとえば、3,000万円で売却した場合、仲介手数料の上限は105.6万円になります。
なお、買取業者に直接売却する場合は仲介取引ではないため、仲介手数料は発生しません。
出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html)
解体費用
空き家を更地にして売却する場合は、建物の解体費用が必要になります。費用は建物の構造や大きさ、立地条件などによって変わります。
一般的な目安として、
●木造住宅:坪あたり3万円〜5万円
●鉄骨造住宅:坪あたり5万円〜7万円
●鉄筋コンクリート造住宅:坪あたり6万円〜8万円
となっています。たとえば、30坪の木造住宅を解体する場合は、約90万円〜150万円程度の費用がかかります。
リフォーム費用
空き家をリフォームして売却する場合は、工事費用が発生します。とくにキッチンや浴室、トイレなどの水回りを整えると、一般的に100万円から300万円程度を見込みます。 リフォームは見た目や使い勝手を改善して売れやすさを高めますが、費用が高くなる場合があります。
かけた費用を売却価格で回収できるとは限らないため、どの範囲を直すかを決める前に、費用対効果を不動産会社と相談しながら慎重に検討してください。
清掃費用
空き家を売却する前には、室内の清掃や不用品の処分を行う必要があります。専門の清掃業者に依頼する場合、3LDKの住宅でおおよそ15万円から50万円が目安です。
一方で、買取業者に売却する場合は、荷物の片付けや清掃を行わなくてもそのまま引き渡せるケースが多く、これらの費用を節約できることがあります。
相続登記費用
相続した空き家を売却するには、まず名義を変更するための「相続登記」を行う必要があります。相続登記には、登録免許税と司法書士への報酬がかかります。
登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の0.4%が目安です。司法書士に依頼する場合の報酬は、一般的に5万円から10万円ほどです。
また、2024年4月から相続登記は義務化されています。相続が発生したことを知ってから3年以内に登記を行わない場合、10万円以下の過料(罰金)が課される可能性があるため、早めの手続きを心がけましょう。
空き家を売却する際のポイント
空き家をスムーズに売却するために、押さえておきたいポイントを5つ紹介します。
名義変更を必ず行う
相続した空き家を売却する場合、亡くなった方(被相続人)の名義のままでは売却できません。売却手続きを進める前に、必ず相続登記を行って相続人の名義に変更する必要があります。
2024年4月からは相続登記が義務化されており、相続が発生したことを知った日から3年以内に登記を済ませなければなりません。正当な理由がなく登記を怠った場合、10万円以下の過料が課される可能性があります。
また、空き家を売却する際は、相続人全員の同意が必要です。手続きを円滑に進めるためにも、早めに相続人同士で話し合い、誰が相続するか、売却するかを明確に決めておきましょう。
更地にする場合は時期を見極める
空き家を解体して更地にする場合は、解体の時期を慎重に判断することが重要です。
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者と不動産の状態をもとに課税されます。もし1月1日時点で更地になっていると、住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍に増える可能性があります。
そのため、解体する理想的なタイミングは、売買契約を結んだあと、引き渡しの前に行うことです。このタイミングで解体すれば、不要な税負担を避けながらスムーズに売却を進められます。
売却期間に余裕をもたせる
不動産の売却は時間がかかるもので、売却活動を始めてから契約が成立するまで、一般的に3か月から6か月ほどかかります。
売却を急いでいることが買主に伝わると、価格交渉で不利になることがあります。余裕のあるスケジュールを立てることで、適正な価格での売却につながりやすくなります。
また、税制優遇を受ける場合には申請期限があるため、余裕をもって売却を進めることが大切です。期限が迫ってから慌てて売却を進めると、希望する価格で売れない可能性もあります。
早めに現金化したい場合や、期限まで時間がない場合は、不動産の買取業者に依頼する方法も検討しましょう。
家の状態を確認する
売却を進める前に、空き家の状態を詳しく点検しておきましょう。建物の外観や内装、設備の状態を確認し、雨漏りや傾き、外壁のひび割れ、設備の故障などがないかチェックします。
また、その土地に新しく建物を建てられるかどうかも重要なポイントです。再建築ができない「再建築不可物件」の場合、更地にしてしまうと新たな建物を建てられず、土地の価値が大きく下がってしまいます。
事前に建物や土地の状態を把握しておくことで、売却時に買主へ正確な情報を伝えられます。その結果、売却後に不具合が見つかって契約不適合責任を問われるようなトラブルを防ぐことができます。
売買契約書を用意する
空き家を売却する際には、購入時の売買契約書や領収書などの書類が必要になります。これらは譲渡所得税を計算する際に「取得費」を証明する大切な資料です。なくさないように保管しておきましょう。
もし購入時の売買契約書が見つからない場合、取得費は売却価格の5%として計算されます。その場合、実際の購入額よりも少なく計算されるため、結果的に譲渡所得が多くなり、税金が高くなる可能性があります。
相続した空き家を売却する場合は、被相続人(亡くなった方)が当初購入した際の売買契約書を探しておくことが重要です。これによって、正確な取得費を申告でき、余分な税負担を防ぐことができます。
まとめ
空き家を売却する際には、譲渡所得税、印紙税、登録免許税、固定資産税など、さまざまな税金がかかります。とくに譲渡所得税は、売却で利益が出た場合に大きな負担となることがあります。
ただし、条件を満たせば最大3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。相続した空き家の特例やマイホームの特例、10年以上所有した場合の軽減税率の特例などを活用すれば、大きく節税することができます。
空き家の売却方法には、現状のまま売る、リフォームして売る、更地にして売る、マッチングサイトを利用する、買取業者に依頼するなど、いくつかの選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分の状況に合った方法を選びましょう。
INTERIQでは、雨漏りや傾きがある建物、心理的瑕疵のある物件でも現状のまま買い取り可能です。荷物の片付けや解体を行う必要がなく、早期に現金化できます。
空き家を放置すると、固定資産税や維持費の負担が続くだけでなく、建物の老朽化により売却価格が下がるおそれもあります。税制優遇の期限もあるため、早めに売却を検討することが大切です。
空き家の売却でお困りの方は、ぜひINTERIQへご相談ください。


