空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?時期や避ける方法を解説

2025.11.07

空き家の固定資産税が上がる話を聞いたことはありませんか?

これは単なる噂ではなく、2023年12月の法改正で実際に制度が変わりました。管理が行き届いていない空き家は「管理不全空き家」とされ、勧告を受けると「特定空き家」と同様に住宅用地の特例が外れ、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。

本記事では、空き家にかかる税金の基本、6倍になる具体的な条件や時期、さらに増税を避けるための現実的な対策を解説します。

空き家にかかるのは固定資産税と都市計画税

空き家は、人が住んでいなくても毎年税金がかかります。主なものは「固定資産税」と「都市計画税」で、いずれも毎年1月1日(賦課期日)時点で所有者として固定資産課税台帳に登録されている方に課税されます。

税額は立地や管理状況で変わり、とくに管理が不十分な場合は大幅に増えることもあります。空き家を所有するなら、仕組みを理解し早めに対策を考えることが大切です。

固定資産税とは

固定資産税は、土地や建物など不動産を所有している人に毎年かかる地方税です。課税対象は毎年1月1日時点の所有者で、全国一律に課税されます。

基本の税率は1.4%ですが、市町村によって調整が入る場合があります。計算方法は「固定資産税評価額×税率」で、たとえば評価額が1,000万円の場合、1,000万円×1.4%=年額14万円となります。

都市計画税とは

都市計画税は、市街化区域にある土地や建物に課される地方税です。全国の不動産すべてにかかるわけではなく、都市計画区域内に所在するものだけが対象となります。

税率は市町村ごとに定められ、上限は0.3%とされています。計算方法は固定資産税と同じで、固定資産税評価額に税率をかけて算出されます。

出典:東京主税局公式サイト(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi

こちらの記事では、空き家売却時の税金について解説しています。
控除を受けられる条件や注意点も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

固定資産税が減免される住宅用地の特例とは

住宅用地の特例は、居住用の土地にかかる税負担を軽くするための制度です。住宅用地に対する固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1まで減額されます。

ここでは、住宅用地の特例について見ていきましょう。

特例による税額の算出方法

住宅用地の特例では、土地の面積に応じて課税標準額が軽減されます。

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 200㎡以下 課税標準×6分の1 課税標準×3分の1
一般住宅用地 200㎡を超える 課税標準×3分の1 課税標準×3分の2

たとえば、300㎡の土地を所有している場合、そのうち200㎡までは小規模住宅用地として扱われ、残りの100㎡には一般住宅用地の特例が適用されます。

この特例は1戸ごとに計算される仕組みのため、アパートやマンションといった集合住宅では「1室=1戸」として計算され、すべての住戸に特例が適用されます。

出典:国土交通省公式サイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712029.pdf

特例が適用されないケース

住宅用地特例が外れる代表例は、建物を解体して更地にした場合です。この時点で土地は「住宅用地」と見なされず、固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍に跳ね上がります。

また、特定空き家・管理不全空き家に該当し、賦課期日(1月1日)までに必要な措置を行わなかった場合、適用対象から除外されます。

例としては、建物があっても住宅として機能しておらず、保安上危険となるおそれのある場合や、衛生上有害となるおそれのある場合、管理が行き届かず著しく景観を損なっている場合などが挙げられます。

このようなケースでは住宅用地特例が外れ、固定資産税や都市計画税の負担が大幅に増える可能性があります。空き家を所有する際は、特例を維持するために適切な管理を行うことが欠かせません。

出典:東京都主税局公式サイト(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi/tokuteiakiya

固定資産税が6倍になる特定空き家とは

2015年に施行された「空家等対策特別措置法」によって、管理が不十分な空き家は「特定空き家」に指定される仕組みが導入されました。さらに2023年の法改正では、新たに「管理不全空き家」という区分が追加されています。

ここでは「特定空き家」と「管理不全空き家」について見ていきましょう。

特定空き家の条件

特定空き家と判断される条件は、空家等対策特別措置法第2条2項に定められています。主に次の4つです。

●倒壊など著しく危険なおそれがある状態
屋根や外壁の損傷、基礎の不具合、建物の傾き、ガラス破損などが該当し、災害時に倒壊する危険が高い場合。
●著しく衛生上有害なおそれがある状態
排水設備の破損による汚水流出、害虫や害獣の繁殖、アスベスト飛散、悪臭の発生などが含まれる。
●著しく景観を損なう状態
外壁の劣化や汚損、不法投棄、雑草の異常繁茂など、地域の景観に大きな悪影響を及ぼす場合。
●周辺の生活環境の保全を図るうえで放置が不適切な状態
不法侵入や放火の温床となる、動物の棲み家になる、倒木の危険があるなどのケース。

出典:e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127#Mp-Ch_1:~:text=%E3%82%82%E3%81%AE%E3%82%92%E9%99%A4%E3%81%8F%E3%80%82-,%EF%BC%92,-%E3%81%93%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%BE%8B%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A6

特定空き家になるタイミング

特定空き家に指定されても、その時点ですぐに固定資産税が上がるわけではありません。税額が最大6倍に跳ね上がるのは、自治体から「勧告」を受け、その翌年1月1日を迎えたときです。

固定資産税は毎年1月1日が課税の基準日とされているため、年の途中で勧告を受けても、その年の税額は変わりません。ただし翌年までに改善されなければ住宅用地特例が外れ、大幅な増税につながります。

ポイントは、勧告を受けた年のうちに修繕や清掃などの改善を行えば、特例解除を避けられる可能性があるということです。逆に1月2日以降の改善では間に合わないため、できるだけ早めに対応することが欠かせません。

法改正による管理不全空き家とは

2023年12月13日の法改正で、新たに「管理不全空き家」という区分が導入されました。

管理不全空き家とは、そのまま放置すると「特定空き家」に移行するおそれがある状態のことです。具体的には、窓や外壁の一部が壊れている、雑草が生い茂っている、軽度のごみが放置されているといったケースが該当します。

これまでは、特定空き家に指定されるまで住宅用地特例が適用されていましたが、改正後は管理不全空き家の段階で「勧告」を受けると特例が外れる可能性があります。

ただし、自治体からの指導に従って改善を行えば特例は継続されます。逆に放置すれば勧告に至り、固定資産税や都市計画税の負担が一気に増えるため、できるだけ早めの対応が不可欠です。

特定空き家になるまでの流れ

特定空き家に指定されるまでには、段階的な手続きが定められています。流れを把握しておくことで、早めに対応し、税負担やペナルティを避けることが可能です。

1.調査:自治体が職員の巡回や近隣からの通報をもとに状況を確認。事前連絡なしで実施される場合もある。特定空き家の基準に該当するか検討。
2.助言・指導:所有者に改善内容を通知。強制力はないが、放置すると次の段階へ。
3.勧告:「特定空き家」に指定。翌年1月1日から住宅用地特例が外れ、固定資産税が最大6倍に。
4.命令:勧告に従わなかった場合に発出。違反すると50万円以下の過料が科される。
5.行政代執行:自治体が強制的に改善や解体を行い、費用を所有者に請求。通常より高額になり、支払えない場合は財産差し押さえの可能性もある。

このように、特定空き家への指定は一気に行われるのではなく、段階を踏んで強制力が強まっていきます。とくに「勧告」を受けると税額が大幅に増えるため、早い段階で改善に取り組むことが重要です。

出典:e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127#Mp-Ch_1:~:text=%E3%82%88%E3%81%86%E6%8C%87%E5%B0%8E%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%80%82-,%EF%BC%92,-%E5%B8%82%E7%94%BA%E6%9D%91%E9%95%B7%E3%81%AF%E3%80%81%E5%89%8D%E9%A0%85%E3%81%AE%E8%A6%8F%E5%AE%9A

空き家と固定資産税の注意点

空き家は収益の有無にかかわらず、毎年必ず固定資産税の納付が必要です。相続で取得した場合も、登記の名義変更をしていないかどうかに関係なく、納税義務は発生します。

さらに、放置を続けると税負担にとどまらず、近隣とのトラブルや資産価値の下落、法的責任の追及といったリスクに発展しかねません。これらを避けるために、具体的な注意点と対策を順に確認していきましょう。

固定資産税を払わないことのリスク

固定資産税を滞納すると延滞金が加算され、支払いが遅れるほど利率も上がり、負担はますます重くなります。さらに放置を続ければ、預金や給与、不動産や自動車など、所有しているあらゆる財産が差し押さえの対象となる可能性があります。

口座凍結や給与の差し押さえ、公売による不動産の安値売却など、生活や資産に深刻な影響を及ぼす事態に発展しかねません。

どうしても支払いが難しい場合には、そのまま放置せず、早めに自治体の納税課へ相談することが重要です。分割納付や納税猶予といった制度を利用できる場合もあり、最悪の事態を避けるための選択肢が用意されています。

空き家を放置することのリスク

空き家を放置すると、固定資産税以外にもさまざまなリスクが生じます。

●近隣への被害:屋根瓦の落下や外壁の剥落、倒木などで通行人や住民に怪我をさせると、高額な損害賠償責任を負う可能性があります。
●防犯上の問題:不法侵入や放火の温床となりやすく、火災時には延焼リスクも伴います。
●衛生面の悪化:害虫・害獣の発生や不法投棄、雑草繁茂による蚊の発生源化など、近隣住民の生活に悪影響を与えます。
●資産価値の低下:建物の劣化が進むと修繕費用が価値を上回り、経済的価値を失うこともあります。
●行政代執行:自治体による強制解体では通常の数倍の費用がかかり、数百万円を一括で請求される可能性があります。

このように空き家の放置は、経済的にも社会的にも大きなリスクを抱えることになります。

固定資産税が6倍になることを避けるには

空き家の固定資産税増額を防ぐには、複数の方法を検討することが重要です。所有者の状況や立地、建物の状態を踏まえ、短期的な費用だけでなく長期的な負担やリスクも考慮して判断しましょう。

ここからは、税額の増加を回避するための具体的な対策を紹介します。

空き家を売却する

空き家を売却すれば、固定資産税や都市計画税、管理費用など所有にともなう負担をすべて解消できます。

相続した空き家には「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」が適用され、最大3,000万円までの控除を受けられる可能性があります。ただし、建築年や解体期限などの要件を満たす必要があるため、注意が必要です。

一方で、老朽化が進んでいたり事故歴があったりする物件は、通常の市場では買い手がつきにくいのが実情です。しかし「雨漏り」「傾き」「事故物件」などの訳あり物件に特化した買取業者であれば、査定や買取に応じてもらえるケースがあります。

株式会社NEXERとINTERIQが合同で行ったアンケート調査では「実家を相続した場合、売却を検討する」と答えた方が約3割にのぼりました。多くの人が固定資産税や管理の負担を避けるために、売却という選択肢をとっていることがわかります。

調査データ引用元:記事公開後、該当URLをご記載ください。

出典:国税庁公式サイト(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

こちらの記事では、空き家の売却について解説しています。
具体的な方法や流れも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

更地にしてから売却する

建物を解体して更地にすれば、活用の幅が広がり、買い手が見つかりやすくなる場合があります。ただし、この時点で住宅用地特例が外れるため、固定資産税が大幅に増える点には注意が必要です。

更地のメリットとしては、売却後の契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を負わなくてよいことが挙げられます。老朽化した建物にありがちな設備不良や構造上の問題に関するリスクを避けられるためです。

一方で、解体費用は無視できません。木造住宅なら5~6万円/坪、鉄骨造なら6~8万円/坪程度が相場で、30坪の木造住宅なら150~180万円ほどかかります。自治体によっては解体費用の一部を補助する制度があるため、事前確認がおすすめです。

固定資産税負担の増加と、売却しやすさによる価格上昇効果を比較し、総合的に判断することが重要です。

売却せずに有効活用する

空き家を手放さずに収益を得る方法もあります。

たとえば、賃貸住宅として貸し出せば、賃料収入で固定資産税や管理費用をまかなえる可能性があります。ただし、多くの場合は水回りや内装の修繕が必要となり、初期投資を見込んでおく必要があります。

ほかにも、民泊やシェアハウスとしての活用が考えられます。観光地や都市部であれば一定の需要が期待できますが、営業を始めるには自治体への届出など法的手続きが欠かせません。

また、店舗やアトリエ、事務所として貸し出す方法も有効です。改修の自由度が高いため、特殊なニーズに対応できる点が強みです。さらに、自治体が受け入れる場合には、建物を寄付することで固定資産税の負担から解放される可能性もあります。

どの方法を選ぶにしても、地域ごとの需要をしっかりと見極め、専門家に相談しながら進めることが大切です。

行政の指示内容を改善する

管理不全空き家や特定空き家として「勧告」を受ける前に対応すれば、固定資産税の増額を回避できます。行政からの指示内容は多くの場合、雑草の除去や外壁の補修といった軽微なものが中心で、早めに改善すれば大きな費用をかけずに解決できるケースがほとんどです。

よくある指導内容には次のようなものがあります。

●清掃:敷地内のごみ撤去、雑草の刈り取り、落ち葉の処理など
●軽微な修繕:窓ガラス交換、外壁の一部補修、屋根瓦の差し替えなど。放置すると大規模修繕につながる恐れがあります。
●樹木の剪定・伐採:道路や隣地への枝の越境、倒木の危険がある場合に求められます。専門業者に依頼することも多いですが、近隣トラブル防止につながります。

こうした改善は、固定資産税などの負担増を防ぐだけでなく、将来的に売却や賃貸を検討する際にも大きなメリットとなります。

親族や知人に管理を依頼する

空き家が遠方にあったり、多忙で自分では管理が難しいときには、親族や知人に依頼する方法があります。ただし、長期的に任せる場合にはいくつかの注意点を押さえておく必要があります。

短期間の管理であれば協力を得やすく、転勤や入院など一時的な事情にも柔軟に対応できます。しかし、長期的に依頼する場合には、交通費や清掃用具代といった実費に加え、謝礼といった対価を負担することも考慮しなければなりません。

また、管理内容は「月に何回見回りをするのか」「清掃はどの範囲まで行うのか」「異常があった場合の連絡方法をどうするのか」などを明確に決めておくことが欠かせません。専門知識が不足していると、建物の不具合や行政からの指導に十分対応できない可能性もあります。

さらに、トラブルが発生した場合の法的責任は最終的に所有者にあるため、責任範囲を事前に取り決めておくことが安心につながります。

専門業者に管理を依頼する

空き家が遠方にある場合や、より専門的な管理を必要とする場合には、空き家管理の専門業者に依頼するのが安心です。プロによる点検や清掃を受けることで、特定空き家に指定されるリスクを大幅に減らすことができます。

専門業者のサービス内容は多岐にわたり、外観や内部の点検、通水や通電の確認、清掃や草木の手入れ、近隣住民への対応、定期的な報告書の提出などが含まれます。料金の目安は月額5,000円から10,000円程度で、建物の規模や依頼する作業内容によって変動します。

依頼することで、不具合の早期発見や自治体からの指導への迅速な対応が可能になります。また、近隣住民との良好な関係維持にもつながり、長期的には修繕費用の抑制に寄与する場合もあります。

ただし、管理費用は継続的に発生するため、将来的な修繕費や固定資産税とあわせて総合的に判断することが欠かせません。依頼する際には、業者の実績や料金体系、緊急時の対応体制などを比較し、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。

まとめ

空き家を放置すれば、固定資産税が最大で6倍になるだけでなく、近隣トラブルや資産価値の下落、さらには法的責任といった深刻なリスクにつながります。2023年の法改正により「管理不全空き家」という区分も新設され、税負担が増える可能性はこれまで以上に高まっています。

こうしたリスクを根本的に解消するもっとも確実な方法は、早い段階で売却して所有による負担を手放すことです。とくに雨漏りや傾き、事故歴のある物件は仲介では買い手がつきにくいため、直接買取が現実的な選択肢となります。

INTERIQでは、事故物件や相続した空き家、欠陥住宅などの「訳あり物件」の買取を専門に行っています。最短即日での買取にも対応しており、これまで他社で断られた物件でもそのまま売却できる可能性があります。

お見積もりやご相談も無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

INTERIQでは訳あり物件の買取に関する相談を受け付けております。
お見積もりやご相談は無料です。
お困りの際にはぜひお問い合わせください。

PAGE
TOP