再建築不可物件を相続するか、それとも処分するかという選択は、多くの方が相続時に直面する重要な決断です。再建築不可物件の特徴や見分け方、相続時に考慮すべきリスクやメリット、そして処分方法について理解しておけば、焦らずに最適な選択ができるでしょう。
本記事では、再建築不可物件の確認方法や相続する際のメリット・リスクについて解説します。また、相続放棄に関する注意点やその流れについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
相続するのが本当に再建築不可物件かを確認しておこう
まず、相続予定の物件が本当に再建築不可物件かどうか確認しましょう。再建築不可物件とは、建物を新しく建て替えられない土地です。
ここからは、再建築不可物件となる要件と相続物件が再建築不可物件か調べる方法について解説します。
再建築不可物件となる要件
再建築不可物件となる代表的な要因は、主に以下の2つです。
●接道義務を満たしていない
●市街化調整区域にある
それぞれの要因について解説します。
接道義務を満たしていないケース
ひとつ目は、土地が建築基準法の接道義務を満たしていないケースです。建築基準法第43条では「建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」と規定されています。
したがって、幅4m以上の公道に敷地が2m以上面していない土地には、建物を建てられません。たとえば、以下のような土地です。
●敷地が道路にまったく接していない土地
●接している道路の幅が4m未満の土地
●道路への接道部分が2m未満しかない土地
いずれも上記の要件を満たしていないため、再建築不可物件に該当します。
出典:e-GOV法令検索「建築基準法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
市街化調整区域にあるケース
2つ目は、土地が市街化調整区域に指定されているケースです。市街化調整区域とは、都市計画法で定められた区域で、開発を抑制する地域を指します。該当区域内の土地は原則として新たな建物の建築が制限されるため、再建築不可物件となる可能性があります。
土地の状態に関わらず開発行為が制限されるため、住宅用途への建て替えはできません。相続予定の不動産が、いずれかの条件に該当しないかを確認しましょう。
相続物件が再建築不可物件か調べる方法
調査方法は、以下の3つです。
●自力で調査する
●役所の建築課に確認する
●不動産業者に確認する
ここでは、各方法について解説します。
自力で調査する
まずは自分で情報収集する方法です。物件の権利証や登記簿謄本を確認し、敷地形状や接している道路の状況を把握しましょう。たとえば、敷地図面(地積測量図)があれば、道路との接道の長さを測れます。
また、市区町村が公開している都市計画図をインターネットで確認すれば、その土地が市街化調整区域かどうかを調べられます。こうした公開情報を活用して、接道2m以上か、市街化調整区域ではないかをチェックしてみましょう。
役所の建築課に確認する
自力の調査で確証が持てない場合は、役所の建築課で確認するのも有効です。市区町村の建築指導課などに物件の所在や地番を伝えれば、その物件が建築基準法上の接道義務を満たしているか、市街化調整区域内かを教えてもらえます。
役所で照会する際は、登記事項証明書や地積測量図など、物件を特定できる資料を持参しましょう。担当者が状況を確認し、再建築不可かどうかを判断してくれます。
不動産業者に確認する
不動産の専門業者に相談する方法もあります。不動産会社や建築士に依頼すれば、登記情報や図面をもとに建築基準法や、その他の要件を満たしているかをプロの目でチェックしてもらえます。
接道義務を満たしているかはもちろん、建築確認申請が通る見込みがあるかなどを丁寧に調べてくれるでしょう。また、その土地が住宅を建てられる区域かも含めて確認してもらえます。
専門業者は豊富な知識と経験からアドバイスできるため、相続判断の心強い材料となります。
こちらの記事では、再建築不可物件の概要について解説しています。メリット・デメリットや活用方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
再建築不可物件を相続することのリスク
再建築不可物件を相続する際には、いくつかのリスクを十分に理解しておくことが重要です。ここでは、再建築不可物件を相続する際の代表的なリスクについて詳しく解説します。
家屋が古くなったり倒壊したりしても再建築ができない
再建築不可物件では、古い建物の建て替えができない点に注意が必要です。築年数が経って老朽化した場合だけでなく、地震や火事などの災害で建物が損壊・倒壊した場合でも、新築が認められていません。
一度建物を失うと、その土地には二度と家を建てられなくなります。大規模なリフォーム(増改築)も制限され、自由に住居の改修ができない点も見逃せません。
長期的に見て、いずれ住めなくなる可能性がある土地を抱える点は、あらかじめ留意しておきましょう。
倒壊などで億単位の賠償金を請求されるおそれがある
建物が老朽化して倒壊した場合、被害が周囲に及ぶリスクも考慮しなければなりません。倒壊した建物が隣家や通行人に被害を与えた場合、損害賠償を請求される可能性があります。
老朽家屋が倒壊して隣家を押し潰したり、人に怪我を負わせてしまったりすると、数億円単位の損害賠償を求められるケースも想定されます。そのような事態になれば、自分だけでなく家族の人生にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
メンテナンスの費用や手間がかかる
再建築不可物件の建物のほとんどは古く、維持管理に通常以上の費用と手間がかかる傾向があります。住み続けるにはリフォームや修繕が必要になるケースが多いですが、老朽化が進んだ物件の修繕費用は高額になりがちです。
屋根や外壁の補修、設備の交換など、メンテナンス費用が次々と発生する可能性があります。雨漏りや配管の劣化といった築古物件特有の不具合にも対処しなければならず、精神的な負担も大きいでしょう。
放置すれば状態がさらに悪化してしまうため、費用と手間をかけ続けなければならない事態に陥る可能性があります。
更地になると最大6倍の固定資産税がかかる
再建築不可物件に建つ家屋を取り壊して更地にすると、固定資産税が増税されるリスクがあります。日本の税制では、住宅が建っている土地は固定資産税の課税標準が軽減され、200㎡以下の部分について評価額の1/6、200㎡超の部分は1/3に減額されます。
しかし、建物を取り壊して更地にすると、上記の住宅用地特例が適用されません。本来の税額に戻ってしまうと、小規模住宅用地であれば課税標準が実質6倍になり、固定資産税額も理論上6倍に跳ね上がります。
家を解体して空き地にした結果、翌年から固定資産税が増えて驚くといったケースは珍しくありません。
出典:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi)
売却先を見つけることが難しい
再建築不可物件は市場価値が低く、買い手が付きづらい点もリスクとして挙げられます。新築ができない土地は、利用用途が限られるため資産価値が乏しく、購入希望者を見つけるのは容易ではありません。
たとえ立地が悪くなくても、将来建て替えられない家は敬遠されがちです。不動産会社に仲介を依頼しても、買い手探しに苦労するケースも多いでしょう。
結果として、自分では手放せず持ち続けざるを得なくなり、固定資産税や都市計画税を払い続ける羽目になってしまう場合も考えられます。
子や孫に負担や責任を相続することになる可能性も
再建築不可物件を相続した場合、その負担やリスクを次世代に先送りしてしまうおそれもあります。自分が対処しきれずに持ち続ければ、いずれ自分の子どもや孫が同じ物件を相続することになります。
しかし、それは負の遺産を子や孫に残すことにもなりかねません。老朽化が進んだ家と処分しづらい土地を後世に引き継げば、子や孫もまた維持管理や処分に頭を悩ませ、倒壊リスクや賠償リスクまで背負わせてしまう可能性があります。
再建築不可物件を相続するメリット
リスクが多い再建築不可物件ですが、相続するメリットも存在します。
●固定資産税が安くなる
●相続税が安くなる
それぞれのメリットについて解説します。
固定資産税が安くなる
再建築不可物件は利用価値が低いため、評価額が通常の土地よりも低く設定される傾向があります。その結果、毎年の固定資産税が比較的安く済む場合があります。
再建築不可物件は、接道義務を果たしていないなど不利な条件を抱える土地です。そのため、市町村が評価額を算定する際にも減価要因となり、同じ広さ・場所の土地でも再建築可の土地より低い評価額となります。
評価額が低ければ税額も低減されるため、少ない税負担で所有できる点はメリットといえるでしょう。ただし、固定資産税そのものが免除されるわけではない点には注意が必要です。
相続税が安くなる
再建築不可物件は相続税評価額が通常の不動産より低く算定されるため、相続税が安くなる点もメリットです。相続税評価額の算出では、土地は路線価、建物は固定資産税評価額が用いられます。
公的評価額は市場価格より低めであるうえに、再建築不可という不利な条件によって評価がさらに下がります。たとえば、接道条件が悪い土地は路線価評価において減額補正が行われ、建物も老朽化していれば、評価額はごくわずかでしょう。
結果として、不動産全体の相続税評価額が低く抑えられるため課税対象額も小さくなり、相続税額が軽減されます。
再建築不可物件の相続丨相続放棄か分割か?対処の選択肢
再建築不可物件を相続することになった場合、主に以下2つの対処法があります。
●相続放棄
●代償分割
それぞれの概要について説明します。
相続放棄
最初から一切の相続権を放棄してしまう手続きです。家庭裁判所に申述することで、自分は初めから相続人でなかったことにできます。
相続放棄をすれば再建築不可物件を引き継がずに済み、固定資産税などの負担から逃れられます。ただし、相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も含めて相続しない手続きであり、特定の財産だけを選んで放棄することは認められていません。
相続人として受け取るはずだったほかの遺産も含めて、一切放棄することになる点に注意が必要です。なお、相続放棄には熟慮期間と呼ばれる期限があり、それを過ぎると放棄できなくなります。
出典:裁判所「相続の放棄の申述」(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)
代償分割
代償分割とは、遺産分割方法の一種です。ある相続人が不動産を取得する代わりに、取得者がほかの相続人に対して金銭を支払って調整する方法です。
たとえば、相続人のなかに再建築不可物件に住みたい人がいる場合、その人が物件を相続する代わりに、ほかの相続人へ現金を支払う形で公平を図ります。ただし、代償分割を成立させるには、代償金を支払うだけの資力が取得者にあることが前提です。
再建築不可物件の場合、評価額が低くてもほかの遺産との兼ね合いで多額の代償金が必要になることも考えられます。取得希望者が準備できる金額とのバランスを考慮して採用する必要があります。
出典:国税庁「No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4173.htm)
換価分割
換価分割とは、遺産の不動産を売却して得た現金を相続人の間で分割する方法です。再建築不可物件のように現物を均等に分けられない資産も、売却して現金に換えれば公平に分配できます。
相続人が複数いる場合、物件を売却して得られた代金を法定相続分や話し合いで決めた割合に従って配分します。換価してしまえば誰も物件そのものを相続しないため、再建築不可物件の所有リスクを誰も負わずに済むでしょう。
しかし、物件が売却できなければ話が進みません。再建築不可物件は、一般的に買い手がつきづらいため、すぐに現金化できない可能性があります。
そのため、換価分割を選択する際は、確実に売却できる目処を立ててから進めることが大切です。売却が難しい場合は、専門業者に買取を依頼するなどの方法も検討してみましょう。
相続放棄の注意点
相続放棄を選ぶことで負債を避けることができる一方で、相続財産に関して一切の権利を放棄するため、後々の問題が発生することもあります。ここでは、相続放棄の注意点について解説します。
特定の財産だけを相続放棄することはできない
相続放棄は、遺産の一部のみを放棄することはできません。再建築不可物件のみを相続せず、ほかの現金や預金は相続するといった都合のよい放棄は、法律上認められていないためです。
相続放棄すると、プラスの財産もマイナスの財産も含めて最初から一切の相続人でなかったことになります。すべての相続分を手放さなければならない点を理解したうえで、相続放棄すべきかどうかを判断しましょう。
手続きには期限がある
相続放棄には、熟慮期間という期限があります。民法上、自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述をしなければなりません。
期間内に手続きをしないと、法律上は自動的に相続を承認したものとみなされ、放棄できなくなります。また、3か月を過ぎると原則として期間延長も認められません。
相続放棄を検討するのであれば、被相続人の死亡後できるだけ早く家族で話し合い、期限内に行いましょう。
裁判所に認められると撤回できない
相続放棄は家庭裁判所に申述し受理されることで効力が生じますが、受理が確定すると基本的には撤回できません。民法919条1項で「相続の放棄は原則として撤回できない」と定められており、放棄が一度認められると覆せないためです。
申述書を提出してから受理されるまでには数週間から1か月ほどかかりますが、その間であれば、裁判所に取下書を提出することで放棄申述を中止できます。手続きを進める際は十分に考え抜いたうえで申述し、後悔のないようにしましょう。
出典:e-GOV法令検索「家事事件手続法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052)
維持管理の義務は残る可能性がある
相続放棄をすれば法律上は相続人ではなくなります。しかし、場合によっては放棄後も一時的に遺産の管理義務が残ることに注意が必要です。
これは、民法940条で定められた「保存行為義務」に関する規定によるものです。2023年4月の民法改正によって、相続放棄した人の管理義務について条件と期間が明確化されました。
ポイントは、放棄者がその財産を現に占有しているかどうかです。放棄者が被相続人と同居していて、その家に引き続き住んでいる場合、相続人や財産管理人が決まるまで、家屋や土地を維持・管理する義務を負います。
一方で、放棄者が不動産の管理に一切関与しておらず、現に占有もしていない場合には、管理義務は生じないとされています。つまり、相続を放棄すれば不動産の維持・管理から解放されるわけではありません。
状況によっては、一定の期間は空き家などを管理しなければならない可能性があります。放棄後の物件が放置されて周囲に迷惑をかけないよう、最低限の管理は意識しておく必要があります。
出典:e-GOV法令検索「民法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
相続放棄の流れ
相続放棄を行うには、一定の手続きと期限が必要です。ここでは、相続放棄の流れについて見ていきましょう。
1:遺言書を確認する
相続放棄の検討を始める前に、亡くなった方が遺言書を残していないか確認しましょう。遺言書が存在し、特定の財産の承継について指示がある場合は法律上、その内容が最優先で尊重されます。
仮に遺言で「不動産は長男に相続させる」と指定されていたら、長男以外の相続人はその不動産を相続する権利がありません。このように、遺言書によって相続人や分配が決まっているケースもあります。
遺言書が見つかった場合は、家庭裁判所で検認手続きを経たうえで、遺言書の指示どおりに相続手続きを進めることになります。
2:相続財産と相続人を確定する
次に、相続人の範囲と相続財産の内容を調査・確定します。遺言書が無い場合、民法の規定に沿って相続人全員で遺産分割協議を行うことになりますが、前提として相続人は誰なのか遺産にどんな財産や負債があるかを正確に把握しなくてはなりません。
相続人については、被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本を取得して洗い出します。配偶者や子ども、孫、親、兄弟姉妹といった法定相続人が漏れなく確定できるでしょう。
財産については、以下のような書類を確認してプラスの財産とマイナスの財産の両方をリストアップします。
●預貯金通帳
●不動産登記
●証券会社からの郵便物
●負債に関する書類
相続財産をすべて把握することは、その後の手続きを選ぶ際に不可欠な判断材料となります。もし負債が資産を大きく上回るようであれば、相続放棄や限定承認なども検討しましょう。
3:必要書類を準備する
相続人と財産が確定したら、相続放棄の申述に必要な書類を準備します。家庭裁判所に提出する主な書類は、次のとおりです。
●相続放棄申述書(家庭裁判所所定の書式)
●被相続人の住民票除票または戸籍附票(被相続人の最後の住所地を証明する書類)
●放棄する人(申述人)の戸籍謄本
●被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(申述人が被相続人の配偶者や子である場合)
上記のほか、申述人と被相続人の関係によっては追加書類が必要になる場合があります。基本的な必要書類は裁判所ウェブサイトに案内があるため、チェックリストにそって漏れなく取得しましょう。
出典:裁判所「相続の放棄の申述」(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)
4:家庭裁判所へ相続放棄の申立を行う
書類の準備が整ったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述を行います。提出方法は持参のほか、郵送でも可能です。申述先の裁判所や提出書類について不明な点があれば、事前に電話で確認しておくとよいでしょう。
申述書には放棄の理由などを簡潔に書く欄がありますが、一般的には「相続財産に不動産しかなく、管理が困難なため」などと記載すれば、差し支えありません。裁判所に書類が受理されると、数日から数週間ほどで手続きが進みます。
5:照会状が届いたら回答書を返送する
相続放棄の申述を行うと、後日家庭裁判所から「相続放棄照会書」という書類が郵送される場合があります。相続放棄照会書とは、本当に申述人自身の意思で放棄するのかを確認するための質問状です。
照会書には「あなたが相続放棄をしようとする理由」や「放棄することに家族の同意はあるか」などいくつかの質問事項が含まれています。あわせて「相続放棄回答書」という返送用の用紙も同封されています。
照会書に記載された質問に対する答えを回答書に記入したら、署名を押印したうえで家庭裁判所に期限内に返送しましょう。注意すべきは、回答書を放置して返送しないままでいると、熟慮期間が経過して相続放棄が無効になってしまう可能性がある点です。
郵便物が届いたら、必ず詳細を確認し、速やかに記入・返送しましょう。質問自体は難しいものではなく、正直に「再建築不可の不動産を引き継ぎたくないため」などと答えれば問題ありません。
6:受理通知書を受け取る丨相続放棄が成立
家庭裁判所に回答書が届き、内容に問題がなければ、7〜10日ほどで「相続放棄申述受理通知書」が申述人宛てに郵送されます。この受理通知書が届けば、相続放棄の手続きは正式に完了です。
受理通知書は、家庭裁判所が相続放棄を受理したことの証明となる大切な書類です。今後、金融機関やほかの相続人に放棄した事実を示す際に必要になる場合があります。受理通知書は1回しか発行されず、再発行もできないため、紛失しないよう厳重に保管しましょう。
相続した後の再建築不可物件丨住む?手放す?7つの選択肢
再建築不可物件を相続した後、その物件をどのように活用・処分するかについては、主に以下7つの選択肢が存在します。
●そのままの状態で住む
●リフォームする【要申請】
●自治体に寄付する
●空き家バンクに登録する
●隣地の所有者に売却する
●専門業者に買い取ってもらう
●再建築可能な状態にする
それぞれの選択肢について解説します。
そのままの状態で住む
現状のまま、住み続けるのも選択肢のひとつです。再建築不可物件であっても建物がまだ新しく、生活に支障がない場合はそのまま住み続けても問題ありません。
接道義務を満たしていないとはいえ、既存の建物が家として機能しているならば、引き続き居住可能です。ただし、火災や災害で建物が倒壊した場合には新築できず、その土地に住めなくなるリスクがある点は把握しておく必要があります。
リフォームする【要申請】
建物をリフォームして活用するのもよいでしょう。再建築不可物件は建て替えができませんが、リフォームすること自体は可能です。
内装や外装をリニューアルして快適性を高め、自分で住み続ければ、不自由なく生活が送れるでしょう。賃貸物件として他人に貸し出して、家賃収入を得ることも考えられます。
ただし、建築確認申請が必要となるような大規模改修は事実上できない場合があります。増築など構造に影響する工事は建築基準法上、許可が下りないためです。
また、再建築不可物件のリフォーム費用は、通常の物件より高額になりやすい点も留意しておきましょう。リフォームして収益化を図るのは採算面で厳しい可能性が高く、よほど賃貸需要が見込める立地でない限り、慎重な検討が求められます。
自治体に寄付する
物件を自治体に寄付するのも選択肢として挙げられます。自治体に申し出て土地や建物を引き取ってもらえれば、自分は手放すことが可能です。ただし現実問題として、自治体が個人の不動産をすんなり受け取ってくれるケースは決して多くはありません。
自治体は税収で運営されていますが、寄付で土地を引き取ると課税対象が減り、財政にマイナスが生じるためです。公共用途に使える見込みがある土地でない限り、わざわざ負担になる不動産をもらい受けることはしないのが通常です。
そのため、自治体への寄付は選択肢として頭に入れておきつつも、期待はできないと考えておいたほうがよいでしょう。なお、自治体によっては空き家バンクとは別に「空き家の寄付相談窓口」を設けているところもあるため、問い合わせてみる価値は十分にあります。
ただし、断られた場合に備えて、ほかの対策も並行して検討しておくことをおすすめします。
空き家バンクに登録する
物件を「空き家バンク」に登録することも検討してみましょう。空き家バンクとは、空き家の売り手と買い手をマッチングする公的サービスです。
多くの自治体や国土交通省のサイトで、空き家バンク制度が運営されています。売却または賃貸したい空き家の情報を登録すると、当該地域で空き家を探している人に紹介される仕組みです。
再建築不可物件も、空き家バンクに登録できます。古民家を安く買って、DIYしたい人など、特定のニーズを持つ買い手とマッチングするケースも珍しくありません。登録は無料の場合がほとんどで、自治体の担当窓口に物件情報を提出すれば掲載してもらえます。
空き家バンクに載せることで、不動産会社の通常の市場では出会えないような買い手にリーチできるメリットがあります。ただし、再建築不可であることは正直に伝える必要があるため、価格を低めに設定せざるを得ない点は覚えておきましょう。
隣地の所有者に売却する
隣地の所有者に物件を買い取ってもらうことも可能です。再建築不可物件はそのままでは建て替えができません。しかし、隣接地とあわせれば接道条件を満たせる場合、隣地所有者にとっては価値のある土地となるでしょう。
たとえば、隣地所有者が自分の土地と手放す予定の再建築不可物件を利用すれば、敷地全体で接道2m以上を確保でき、新築可能になるケースがあります。こうした理由から、一般市場の買い手より、隣地の人はその土地を必要としてくれる可能性が高いと判断できます。
隣地所有者への売却は、仲介に依頼して声をかけてもらえば話が進むでしょう。不動産会社を通さず、直接交渉することも可能です。
隣人がその土地を前から欲しがっていた、あるいは駐車場や庭を広げたいと思っていたといった場合も考えられます。まずは、いずれかの方法で隣地に当たってみましょう。
専門業者に買い取ってもらう
訳あり物件の買取を専門とする業者に売却するのもひとつの方法です。再建築不可の物件は、一般の買い手には敬遠されやすいですが、専門業者であればその特性を理解した上で、迅速に査定・買取を行ってくれます。
一般の不動産会社では取り扱いが難しい物件でも、専門業者はその分野に特化したノウハウを持っているため、スムーズに売却手続きが進みます。最短数日以内に現金化できるため、急ぎの手続きにも対応可能です。
また、物件の清掃やリフォームを行う必要もなく、そのままの状態で売却できる点が大きな魅力です。特殊清掃や遺品整理など、必要な作業も一貫して依頼でき、負担が軽減されます。
さらに、専門業者は訳あり物件に精通しており、価格が大きく下がるリスクを抑えたうえで、適正価格で買取りを実施します。一般的な不動産会社では価格の下落が懸念されますが、価格を維持しつつ、リフォームや再販による利益を見込んだ買取りが期待できます。
こちらの記事では、訳あり物件の売却方法について解説しています。売却する際のコツや業者の選び方も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
再建築可能な状態にする
土地を再建築可能な状態に改善する方法もあります。手間も費用もかかるため簡単ではありませんが、完了すれば通常の不動産として活用・売却できるようになります。
再建築可能にするための代表的な方策は、以下の4つです。
●セットバックをする
●隣地の一部を買い取る・借りる
●隣地と土地の等価交換を行う
●43条但し書き申請をする
それぞれの方法について解説します。
セットバックをする
敷地が接する前面道路の幅が4m未満で接道義務を満たせない場合、セットバックするのもよいでしょう。セットバックとは、敷地の一部を道路として提供して道路幅を確保する手法です。
たとえば、前面道路幅が3mしかない場合、自分の土地の道路沿いと反対側の隣地を0.5m後退させ、道路幅4mを確保するイメージです。セットバックによって道路が法定幅員以上になり、かつ敷地がその道路に2m以上接すれば接道義務を満たせるようになります。
セットバック部分は、原則として自分の所有地のままです。しかし、建物を建てたり塀を作ったりできないエリアとなるため、注意しましょう。
なお、セットバックをする場合は、自治体に申請して将来の道路後退用地として指定を受ける手続きが必要です。費用面では、境界確定測量や土地家屋調査士の手配などが発生します。境界が明確なら20〜30万円、曖昧なら50〜70万円程度がコストの目安です。
手間と費用はかかりますが、接道義務をクリアできれば再建築不可状態を解消できるスタンダードな方法です。
隣地の一部を買い取る・借りる
隣地の一部を購入、または借用して接道部分を広げる方法もあります。この方法は、敷地が道路には接しているものの、接道の長さが2m未満しかない極端に間口が狭い土地に適しています。
たとえば、接道幅が1mしかない旗竿地であれば、隣地の道路側を1m譲ってもらい、自分の接道を2mに広げるといったイメージです。購入が難しい場合でも、一時使用賃借という形で建て替え工事中のみ隣地を通路として借りる契約を交わすケースもあります。
ただし、賃借で建築確認を通すのはハードルが高く、隣地所有者の承諾や期間の明確化などの条件が付きます。また、建築後は接道義務を満たさなくなるためグレーゾーンです。
現実的には、隣地の一部買収か等価交換によって恒久的に道路に2m接する権利を確保するのが望ましいでしょう。
隣地と土地の等価交換を行う
隣地との協議で有効なのが、土地の一部を等価交換する方法です。自分の敷地の一部と隣地の一部を交換し合うことで、互いにメリットを得られるでしょう。たとえば、自分の土地の奥側を隣人に渡し、代わりに隣人から道路側の土地をもらうといった交換をします。
このようにすれば、自分は道路に十分接する土地を得られ、隣人はその分敷地を広げたり土地を整えたりできます。登記上は互いに売買した扱いになるため、交換部分の評価額が同程度であることが条件です。
交換によって双方の接道や土地利用が改善するなら、支出をうまく抑えて接道義務を満たす解決策となります。合意形成や測量、登記変更などの手続きは必要ですが、納得できる交換条件を提示できれば、隣地所有者も応じてくれる可能性があります。
43条但し書き申請をする
周囲の土地買収や道路指定が難しい場合の最終手段として、建築基準法第43条但書の許可を取得する方法があります。これは接道義務を満たさない敷地について、所管行政庁の許可を得て、例外的に建築を認めてもらう制度です。
たとえば、敷地の周囲に広い空き地や公園があって防災上問題がない場合など、一定の要件を満たせば許可が下りることがあります。ただし、43条但し書きの許可は建物ごとに個別に出すものであるため、一度建て替えが許可されても次回は許可が再度必要となります。
また許可取得には専門知識が求められ、行政との折衝も欠かせません。自治体ごとに運用が異なるため、事前相談で可能性を探る必要があります。買収もできず、位置指定も難しいため、どうしても建て替えたいと考える場合の苦肉の策といえます。
許可が下りれば再建築できるようになりますが、あくまで例外扱いであることを踏まえて検討しましょう。
出典:e-GOV法令検索「建築基準法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
位置指定道路を申請する
敷地へ至る私道などがあるケースでは、その道を位置指定道路として指定してもらう方法があります。建築基準法42条1項5号にもとづく制度で、一定の幅員・延長を満たす通路を役所が道路として認定するものです。
敷地までの通路が幅4m以上あり、関係者の同意が取れるなら、申請してみるとよいでしょう。位置指定道路となれば、その道路に2m以上接する敷地上に建築できるようになります。ただし、私道の所有者全員の承諾や道路としての整備が必要な場合もあります。
行政への申請手続きは煩雑ですが、根本的な解決が可能です。セットバックや隣地購入と組み合わせて、将来的に位置指定道路にする計画を立てることもあります。
再建築不可物件を相続する際の流れ
再建築不可物件を相続する際の流れは、以下のとおりです。
1.遺言書を確認する
2.相続財産と相続人を確定する
3.遺産の価値を調べる
4.遺産分割協議をする
5.相続登記と相続税申告を行う
それぞれの工程について解説します。
1:遺言書を確認する
まず、相続開始後に遺言書の有無を確認することから始めましょう。被相続人が生前に遺言書を残していれば、その内容が優先されます。遺言書が見つかった場合は家庭裁判所で検認手続きを行い、記載された指定に従って遺産を承継します。
たとえば、遺言で「不動産を長女に相続させる」とあれば、長女がその再建築不可物件を相続するのが基本です。相続放棄も遺言の指定には基本従わなければならないため、手始めに遺言書を探しましょう。
2:相続財産と相続人を確定する
遺言書がない場合や遺言に書かれていない財産については、法定相続人の確定と遺産目録の作成を行います。戸籍謄本を遡って取得し、誰が相続人かを確定させます。
次に被相続人の財産リストを作成しましょう。再建築不可物件については、登記事項証明書や固定資産評価証明書を取得し、評価額を把握します。
プラスの財産とマイナスの財産を比較すれば、相続するか放棄するかの判断材料になるでしょう。不動産については、専門家に簡易査定を依頼して市場価値を知っておくのも有益です。
相続人と財産が確定したら、調べた情報をもとに遺産分割協議へと進みます。
3:遺産の価値を調べる
相続人間で遺産分割の話し合いをする前に、各遺産の評価額を調べておくことが重要です。再建築不可物件は評価額が低く見積もられがちですが、客観的な数字を把握しておきましょう。
固定資産税評価額は市町村から取得でき、市場での売却価格は不動産業者に査定を依頼すれば算出してもらえます。不動産以外の財産も一覧化し、それぞれの金額を明確にしましょう。こうすることで遺産全体の総額がわかり、相続税の試算も可能になります。
万一、負債が資産を上回るのであれば、相続放棄も検討しなければなりません。したがって、遺産の価値を正確に把握する作業は省略せずに行いましょう。
4:遺産分割協議をする
相続人と財産の全体像が掴めたのであれば、相続人全員で遺産分割協議を行います。誰がどの財産をどのくらい相続するかを話し合い、全員が合意したうえで決定します。その際、再建築不可物件を誰が引き継ぐのかが問題となるでしょう。
円満に解決するには、前述の代償分割や換価分割の発想を取り入れるのがおすすめです。たとえば「長男が不動産を相続する代わりに預金を放棄する」や「全員で売却して現金を分ける」といった案などが挙げられます。
話し合いでは、再建築不可物件の維持管理の負担や売却の難しさも共有し、押し付け合いにならないようにしましょう。全員が納得できる落とし所を見つけたら、遺産分割協議書を作成します。
協議書には誰が何を相続するか詳細に記し、相続人全員が署名・実印押印して作成します。協議書は、あとの相続登記や相続税申告にも必要となる重要書類です。
5:相続登記と相続税申告を行う
遺産分割の内容が決まったら、各種名義変更などの相続手続きを行います。再建築不可物件を相続する人が決まった場合、相続人は速やかに不動産の相続登記を行いましょう。相続登記とは、不動産の所有者名義を被相続人から相続人へ変更する手続きです。
物件所在地を管轄する法務局に遺産分割協議書や戸籍類、登記申請書、固定資産評価証明書などを提出して行います。2024年4月1日以降は相続登記が相続人の義務となり、怠ると過料の対象になるため、忘れずに済ませましょう。
あわせて、相続税の申告と納付も行います。相続開始から10か月以内が期限です。把握した遺産総額が基礎控除額を超える場合、所轄の税務署に相続税の申告書を提出して税額を納めます。
再建築不可物件の相続時にかかる税金
再建築不可物件を相続した際には、以下の税金がかかります。
●相続税
●登録免許税
●固定資産税・都市計画税
それぞれどの程度かかるのか、前もって把握しておきましょう。
相続税
被相続人の遺産に対して課される国税です。相続財産の総額が基礎控除額を超える場合に、超過分に対してかかる税金です。
相続税の計算方法は、まず各相続人が法定相続分どおりに遺産を取得したと仮定して課税価格を算出します。計算した値から基礎控除額を差し引きます。計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
残った課税遺産総額に対し、10〜55%の累進税率を適用して税額を計算します。税率は財産額に応じ段階的に上がり、算出税額から各種控除を差し引いたものが最終的な納付税額です。
再建築不可物件を相続した場合、物件の評価額は低めになるため、ほかに大きな資産がなければ基礎控除内に収まり、相続税がかからないケースも少なくありません。
出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm)
登録免許税
登録免許税とは、不動産の名義変更登記などの各種登記手続きの際に課される税金です。相続によって不動産の所有権移転登記をする際にも、登録免許税が発生します。
金額は、不動産の評価額に一定の税率を掛けて算出されるものです。相続登記の税率は、固定資産税評価額の0.4%と定められています。
たとえば、固定資産評価額1,000万円の土地建物であれば、相続登記の登録免許税は0.4%の4万円です。売買による所有権移転等の際の税率が2.0%であることを考えると、低い優遇税率といえるでしょう。
再建築不可物件の場合、固定資産評価額自体が低めなケースがほとんどです。そのため、登録免許税額もそれほど大きな負担にはならないでしょう。
なお、相続人以外の人が遺言によって不動産を取得した場合など、一部例外では0.4%ではなく別の税率が適用されます。しかし、通常の法定相続人による相続登記であれば、0.4%で問題ありません。
出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)
固定資産税・都市計画税
固定資産税は、土地や建物など固定資産の所有者に毎年課される地方税です。都市計画税は市街化区域内の土地・建物に課される付加税で、固定資産税と合わせて課税されます。どちらも、相続後に継続して負担していく税金です。
税額は毎年1月1日時点の所有者に対して課せられ、通常4〜6月頃に市町村から納税通知書が届きます。なお、固定資産税と都市計画税は「固定資産税評価額×税率」で計算されます。税率は自治体によって多少異なりますが、固定資産税は課税標準の1.4%、都市計画税は0.3%程度が一般的です。
住宅が建っている土地には、特例措置があります。具体的には、200㎡以下の部分は課税標準が6分の1になります。
そのため、再建築不可物件であっても、家屋があるうちは土地の税負担はあまり大きくはならないでしょう。一方、家屋を取り壊して更地にすると住宅用地特例がなくなり、一気に税額が上がります。
このように、土地や建物を相続して、所有し続ける限りは、毎年固定資産税・都市計画税を支払い続ける義務が発生します。相続時点でまとまった税がかからなくても、固定資産税は長期的なランニングコストとして見逃せません。
たとえば、土地評価額が500万円、家屋評価額が100万円で住宅用地特例適用の場合、自治体による差はありますが、固定資産税は土地約5,000円・建物約14,000円、都市計画税は土地約17,000円となります。
出典:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi)
再建築不可物件の相続税評価額の計算方法
再建築不可物件における相続税評価額の計算方法について説明します。計算の際、必要となるのが以下2つの要素です。
●基礎控除額
●税率・控除額
なお、場合によっては相続税がかからないケースもあります。ここからは、具体的な計算方法と上記の計算要素、相続税のかからない場合について解説します。
相続税評価額
相続税評価額とは、 相続税を計算するときの財産価値の基準です。実際の市場価格ではなく、国税庁が定めた基準に基づいて算定されます。評価方法は、土地と建物によって異なります。
土地
土地の相続税評価額は、原則として所在地の路線価にもとづいて計算します。路線価とは主要な道路沿いに1㎡当たりの評価額を定めたもので、市街地の土地は路線価図で価額を調べることが可能です。
路線価が定められていない地域は、市町村の固定資産税評価額に一定の倍率を掛けた「評価倍率表」で評価します。再建築不可物件の土地の場合、接道条件が悪いなど利用上の制約があるため、路線価評価において減額要因として考慮されます。
出典:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm)
出典:国税庁「No.4620 無道路地の評価」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4620.htm)
出典:国税庁「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」(https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_rtof.htm)
建物
建物の相続税評価額は、建物の固定資産税評価額によって計算します。具体的には、市町村が算定している固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。
建物は年数が経つごとに評価額が下がる仕組みになっており、築古であればあるほど評価額は安くなる場合が多いです。再建築不可物件に建つ建物は、多くが古い住宅や古家に該当するため、評価額が低くなりやすい傾向にあります。
出典:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm)
基礎控除額
相続税には、各相続で一律に差し引ける基礎控除額が設けられています。現行の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式です。たとえば、相続人が配偶者と子2人の合計3人なら「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」が基礎控除額になります。
上記の金額までの相続財産には、相続税がかかりません。計算した相続税評価額の合計が基礎控除の金額以内で収まれば、申告は必要でも結果的に税額はゼロとなります。
再建築不可物件の評価額が低いことは、基礎控除との関係で有利に働きます。総遺産額が基礎控除に等しいケースでは、不動産評価額が下がることで非課税枠内に収まり、相続税ゼロになることがあるためです。
出典:国税庁「No.1199 基礎控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm)
税率・控除額
基礎控除を超える遺産がある場合、課税遺産総額に応じた税率が適用されます。相続税の税率は累進構造で、課税対象額が多いほど高率になります。具体的な税率・控除額は、以下の表のとおりです。
課税価格の階層 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
上記のような具合で、税率は段階的に上がります。こうした控除を活用すれば、負担額が抑えられるでしょう。
相続税評価額が基礎控除額を下回った場合は相続税がかからない
相続税評価額の合計が基礎控除額を下回れば、相続税は一切かかりません。再建築不可物件を相続するケースでは、そもそも物件価値が低く総財産額が少ないケースも多いでしょう。
その場合、基礎控除内に収まって相続税の申告が不要となる可能性があります。ただし、評価額が低いからといって確認を怠るのは避けたほうが無難です。必ず一度は、全財産の評価額を算出し、基礎控除額と比較しましょう。
不動産以外に預金などが多額にあれば、課税になる可能性も考えられます。相続人の人数によって基礎控除枠も変動するため、まずは正確に計算する必要があります。
まとめ
再建築不可物件は、接道条件や法的制限により新築が認められないため、相続後の活用や処分には慎重な判断が求められます。固定資産税の増加や倒壊リスク、買い手が見つからないといった問題がある一方、相続税評価額が低くなるなどのメリットもあります。
放棄・売却・活用などの選択肢を比較して、自分や家族にとって負担の少ない方法を選びましょう。売却を検討しているのであれば、再建築不可物件の取り扱いに慣れた専門業者への相談が効果的です。
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